陳玉成

陳玉成：太平天国を支えた英王の生涯

陳玉成（ちん ぎょくせい、Chén Yùchéng、1837年 - 1862年）は、太平天国において重要な役割を果たした指導者の一人です。彼は英王に封じられ、その軍事的な才能で太平天国の勢力拡大に貢献しましたが、その生涯は激動と悲劇に彩られました。

若き日の蜂起と台頭

陳玉成は広西省梧州府藤県で生まれました。14歳の時、叔父である陳承瑢に従い、太平天国の金田蜂起に参加しました。この初期の段階から、彼はその勇敢さと軍事的な才能を発揮し、急速に頭角を現しました。1854年の第二次武昌攻略戦では、その功績が認められ、太平天国軍の中核を担う存在へと成長しました。

その後、1855年には天官正丞相の秦日綱に従い、武昌、廬州、蕪湖を転戦し、冬官正丞相に昇進しました。1856年には秦日綱とともに鎮江の救援に赴き、江北大営を破り、第一次江南大営攻略戦にも参加するなど、各地で戦果を上げました。1857年には、捻軍と協力して桐城で清軍を破り、その名を轟かせました。

英王としての活躍と転換

1858年、陳玉成は前軍主将に昇進し、李秀成とともに江北大営を再び破るなど、太平天国軍の快進撃を支えました。三河の戦いでは勝利を収め、その軍事的才能は広く知られることとなりました。1859年には、その功績が認められ、英王に封ぜられました。

しかし、太平天国の勢力が拡大するにつれて、内部の対立も深まっていきました。陳玉成は重要拠点である安慶の守備を任されていましたが、1860年には安慶の守りを葉芸来に任せ、第二次江南大営攻略戦に参加し、大勝を収めました。しかし、この間、安慶は清軍に包囲されてしまいます。陳玉成は、安慶を救うため李秀成と二手に分かれ、武漢攻略を目指しました。陳玉成は武漢近くの黄州に到達しましたが、イギリスの圧力により武漢侵攻を断念せざるを得ませんでした。

安慶救援に全力を尽くしましたが、激戦の末に安慶は陥落。守将の葉芸来や救援軍の劉昌林らを失い、陳玉成は廬州に退きました。

悲劇的な最期

陳玉成は、扶王陳得才と遵王頼文光を西北に遠征させたため、自軍の戦力は弱体化してしまっていました。1862年、清軍が廬州に侵攻すると、陳玉成は寿州に脱出し、奏王苗沛霖と連携して河南省への侵攻を目論みました。しかし、部下たちは苗沛霖を信用できないと警告し、寿州から離れるよう進言しましたが、陳玉成はこれを聞き入れませんでした。その結果、陳玉成は苗沛霖に捕らえられ、清軍に引き渡されてしまいます。1862年6月、陳玉成は河南で処刑されました。

陳玉成の死は、長江以北の太平天国軍の崩壊を招き、首都天京は清軍に包囲されるという事態を招きました。彼の死は、太平天国の衰退を加速させる大きな要因となりました。陳玉成の生涯は、太平天国の興亡とともに、その勇猛さと悲劇的な結末を後世に伝えています。

陳玉成は、その短い生涯の中で、太平天国のために尽力しました。彼の軍事的な才能は高く評価されるべきですが、同時に、内紛や裏切りといった歴史の悲劇に巻き込まれた人物でもありました。彼の死は、太平天国の歴史において、重要な転換点となりました。

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