陳王謨

陳王謨（ちん おうぼ）

陳王謨は、明代に活躍した軍人であり、その生涯は波乱に満ちたものでした。彼は1532年3月24日に生まれ、1598年8月27日に67歳でこの世を去りました。彼の出自は、廬州府合肥県に本貫を持つ家系で、父は陳圭、母は張夫人でした。

若年期と爵位継承

幼少の頃、陳王謨は父に従い広東へ移り住みます。1555年（嘉靖34年）には、平江伯の爵位を継承し、貴族としての地位を確立しました。翌年の1556年（嘉靖35年）には、僉書後軍都督府事に任命され、軍事の世界で頭角を現し始めます。

軍人としての活躍

1558年（嘉靖37年）、陳王謨は嘉靖帝に近侍する禁兵を管轄する役目を担います。これは皇帝の身辺警護という重要な任務であり、彼に対する信頼の高さが窺えます。1560年（嘉靖39年）には、総兵官として両広（現在の広東省と広西チワン族自治区）に派遣され、駐屯します。この地で張璉が反乱を起こすと、提督の張臬と協力してこれを鎮圧し、3万人以上の反乱軍を捕らえ、または討ち取るという大戦果を上げました。この功績により、1562年（嘉靖41年）には太子太保の位を加えられ、その軍功は広く知られることとなります。

その後の軍歴と失脚

1570年（隆慶4年）には、神機営を管轄する役職に就きます。その後、淮安へ駐屯し、提督漕運総兵として運河の管理にも携わりました。1572年（隆慶6年）には、再び総兵官として湖広（現在の湖北省と湖南省）に派遣されました。しかし、1573年（万暦元年）、漕運総兵であった際に食糧500万の損失を出すという失態を犯し、弾劾を受け免官となってしまいます。これは彼のキャリアにおいて大きな転換点となりました。

晩年と死後

1574年（万暦2年）には入朝し、前軍府の事務を管掌する役目を担います。その後、1598年（万暦26年）8月27日に67歳で亡くなりました。死後、少保の位を追贈され、武靖という諡号が贈られました。

陳王謨の爵位は、子の陳胤兆が後を継ぎました。彼の人生は、軍人としての栄光と失意、そして晩年の名誉回復という、複雑な軌跡を描いています。

まとめ

陳王謨は、明代の動乱期において、軍人として大きな足跡を残した人物です。反乱鎮圧での活躍や、皇帝の近衛兵を管轄するなどの重要な役職を歴任しましたが、一方で漕運での失態により免官となるなど、波瀾に満ちた生涯を送りました。彼の死後、少保の位が贈られたことは、彼の功績が後世に認められた証と言えるでしょう。

参考資料

『明史』巻153 列伝第41
明太子太保平江伯贈少保諡武靖万峰陳公墓誌銘（余継登『淡然軒集』巻6所収）

もう一度検索