陳鑑

陳鑑（ちん かん）は、明代に活躍した官僚であり、字を貞明と称しました。彼の生没年は明らかになっていません。瑞州府高安県を本貫とする人物です。

1427年（宣徳2年）に、陳鑑は進士に及第し、その才能を認められて行人という役職に任じられました。その後、正統年間には、監察御史という重要な役職に抜擢され、その職務能力を発揮しました。特に、順天巡按として派遣された際には、北京の風俗が薄情である理由を深く考察し、その改善を訴えました。彼は、北京の民衆が仏教を過度に信仰していること、葬儀に莫大な費用をかけて家計を破綻させていること、服装や食事が過度に華美であること、歌舞雑技を生業とする人々が蔓延していること、そして賭博が広く行われていることを、北京の風俗を乱す五つの要因として挙げ、朝廷に上奏しました。しかし、彼のこの上奏は礼部に下されたものの、具体的な施策として実行されることはありませんでした。

その後、陳鑑は貴州巡按に転任しました。当時、麓川の首長であった思任発の子、思機発は、王驥との戦いに敗れて孟養へと逃れていました。思機発はその後、北京の朝廷に対して度々謝罪の上書を送り、通貢を願い出ていましたが、英宗はこれを許可しませんでした。1448年（正統13年）には、王驥が率いる明軍が思機発を討伐するために遠征を開始しました。この遠征によって、雲南や貴州の軍民は疲弊し、その混乱に乗じて苗族が反乱を扇動し、福建では鄧茂七の乱が起こるなど、各地で混乱が広がっていました。北京の朝臣たちは、雲南遠征が良くないことを理解していましたが、劉球が王振に逆らったために冤罪で処刑された事件を教訓とし、誰もあえて諫言することができませんでした。

1449年（正統14年）1月、陳鑑は思機発が遠方に逃亡しており、辺境の脅威とはならないと判断し、雲南の守臣に掃討を任せれば十分であり、中央の禁軍を遠征させる必要はないという内容の上奏を行いました。しかし、この上奏は王振の怒りを買い、陳鑑は雲南参議へと転出させられ、騰衝の反乱軍を招諭する役目を負わされることになりました。さらに王振は、かつて陳鑑が貴州巡按であった際に、四川の播州宣慰司を貴州に転属させるよう請願したことを罪として、兵部に弾劾させ、死刑を宣告して獄に繋ぎました。しかし、景泰帝が即位すると、陳鑑は赦免され、その後、河南参議に転任しました。後に、彼は官職を辞して故郷に帰り、その生涯を終えました。

陳鑑の生涯は、官僚としての職務を全うしようとする彼の強い意志と、時の権力者である王振との対立によって翻弄されたものでした。彼の行った政策提言や上奏は、当時の社会情勢に対する深い洞察を示しており、明代の歴史を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考文献: 『明史』巻162 列伝第50

もう一度検索