劉球

劉球（りゅう きゅう）

劉球は、明代に活躍した官僚であり、その字は求楽、または廷振、号は両渓と称しました。吉安府安福県出身で、1392年に生まれ、1443年にその生涯を閉じました。彼は、その学識の高さと、国を思う強い信念で知られています。

生涯

1421年、劉球は進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。しかし、彼はすぐに官職に就くのではなく、10年間自宅で読書に励み、多くの人々が彼の元で学びました。その後、礼部儀制主事に任じられ、その才能を認められるようになりました。胡濙の推薦により、経書の講義で皇帝に近侍する機会を得て、さらに『宣宗実録』の編纂にも参加し、翰林院侍講へと昇進しました。

劉球の人物像を示すエピソードとして、彼の従弟である劉玭が莆田知県を務めていた際、手織りの麻布を贈られた時の出来事があります。劉球はこれを受け取らず、従弟に手紙を送り、その行為を戒めました。このエピソードは、彼の清廉潔白な人柄をよく表しています。

1441年、明の朝廷は英宗の指示の下、麓川の思任発討伐のために大軍を動員しました。この時、劉球はオイラトの脅威を指摘し、麓川への南征よりも北方の警戒を優先すべきだと上奏しました。この上奏文は兵部に回覧されましたが、南征はすでに決定しており、彼の意見は聞き入れられませんでした。

1443年5月、奉天殿に落雷が発生しました。これを受け、劉球は英宗の詔に応じて、優先すべき十事を進言しました。その中でも、彼は再び麓川への南征を諫めました。しかし、この諫言が、当時権勢を誇っていた宦官の王振の怒りを買うことになります。欽天監正の彭徳清が、劉球の上疏は王振を非難するものであると告げたため、王振は激怒し、劉球を獄に投じました。そして、王振は指揮の馬順に、劉球を処刑するよう命じました。同年6月、劉球は洪武帝や永楽帝の名を呼びながら斬首され、その遺体はバラバラにされて獄戸の下に埋められました。これは、王振の私怨による悲劇的な処刑でした。

劉球の死は、多くの人々に衝撃を与えましたが、彼の正義感と学識は決して忘れられることはありませんでした。1450年、景泰帝の時代になると、劉球は名誉回復され、翰林学士の位が追贈されました。諡は忠愍とされ、彼の忠義と潔白な人柄が称えられました。

著書と子女

劉球は、『両渓集』という24巻に及ぶ著作を残しました。これは、彼の思想や学識を後世に伝える貴重な資料となっています。

劉球には二人の息子がおり、長男の劉鉞は広東参政、次男の劉釪は雲南按察使を務めました。彼らもまた、父親の遺志を継ぎ、官僚として活躍しました。

まとめ

劉球は、その博識と国を思う強い信念を持ち、常に民のため、国のことを考えて行動した官僚でした。しかし、時の権力者である王振の怒りを買い、非業の死を遂げました。彼の生涯は、明代の官僚社会の厳しさを物語るとともに、彼の正義感と学識は、後世に語り継がれるべき教訓として、私たちに多くのことを教えてくれます。

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