陸奥按察使

陸奥按察使（むつあぜち）

陸奥按察使は、日本の奈良時代から平安時代にかけて、東北地方に設置された官職です。陸奥国と出羽国（現在の東北地方北部）を管轄し、その行政を監督する役割を担っていました。しばしば陸奥出羽按察使とも呼ばれました。

成立と変遷

719年、全国の一部地域に按察使が設置されましたが、当初、陸奥・出羽両国は含まれていませんでした。しかし、720年に陸奥按察使の上毛野広人が蝦夷によって殺害された事件が記録されており、この頃には既に設置されていたと考えられています。

721年には、按察使の位階が正五位上相当と定められ、同年8月には陸奥按察使が出羽国を管轄下に置きました。

対蝦夷戦争期における役割

陸奥按察使は、蝦夷との戦いにおいても重要な役割を果たしました。大野東人は最初の鎮守将軍とも目される人物で、陸奥・出羽に支配体制を確立しました。また、藤原朝狩は桃生城、雄勝城を築き、軍事・民政を推進しました。38年戦争の時代には、大伴駿河麻呂、藤原小黒麻呂、大伴家持、坂上田村麻呂などが活躍しました。

8世紀の陸奥按察使は、陸奥守や鎮守将軍を兼任することが多く、参議などの高官が任命されることもありました。鎮守将軍が別に任命される場合でも、按察使の方が上位でした。

弘仁年間の整備と形骸化

蝦夷との戦いが終結すると、東北地方では諸制度の整備が進められました。812年には、陸奥出羽按察使の位階が従四位下に引き上げられ、警護する傔仗の人数も増員されました。

しかし、817年の藤原冬嗣以降、陸奥・出羽両国の経営に関わりのない高位の公卿が按察使を兼任することが多くなり、次第に形骸化していきました。按察使は任地に赴かず、中央から任命されるのみとなり、陸奥・出羽両国はそれぞれ中央に直接結びつき、統一的な行政は行われなくなりました。

895年には、遙任の陸奥出羽按察使の傔杖が廃止され、延喜式にも同様の規定が設けられました。

陸奥按察使に任命された主な人物

上毛野広人
大野東人
大伴古麻呂
藤原朝狩
大伴駿河麻呂
藤原小黒麻呂
大伴家持
坂上田村麻呂
藤原冬嗣
藤原良房
源融
藤原基経
藤原定方
藤原実頼
源高明
藤原兼家
藤原道長
藤原公任
* 藤原頼通

（このリストは一部であり、他にも多数の人物が陸奥按察使に任命されています。）

終焉

陸奥按察使は、平安時代後期には完全に形骸化し、その役割を終えました。しかし、東北地方の歴史において、重要な役割を果たした官職として、その名は歴史に刻まれています。

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