藤原定方

藤原定方：平安時代の貴族と歌人

藤原定方は、平安時代前期から中期にかけて活躍した貴族であり、優れた歌人としても知られています。873年、内大臣藤原高藤の次男として生まれ、醍醐天皇の外叔父にあたるという、恵まれた環境で育ちました。

彼のキャリアは順風満帆と言えるでしょう。892年、内舎人として官途に入り、その後陸奥掾などを経て、896年には従五位下・尾張権守に叙任されます。醍醐天皇の即位（897年）を機に右近衛少将に任ぜられ、その後も左近衛少将、右近衛権中将など近衛府の要職を歴任。着実に官位を昇進させていきます。909年には参議に任ぜられ、公卿の仲間入りを果たしました。

天皇の外戚という立場も彼の昇進を後押ししました。913年には、6人を越えて従三位・中納言に抜擢されるなど、驚異的なスピードで昇進。その後も大納言を経て、924年には右大臣に昇進し、藤原北家の棟梁・藤原忠平と並ぶ左右の大臣の地位に就きます。926年には従二位に叙せられました。

藤原定方は、政治面での活躍だけでなく、和歌や管絃にも造詣が深く、紀貫之や凡河内躬恒ら著名な歌人たちを支援したとも伝えられています。彼の才能は『古今[[和歌集]]』をはじめとする13首の勅撰[[和歌集]]への入集、そして『三条右大臣集』と呼ばれる自身の歌集の存在によって証明されています。特に有名なのは、『小倉百人一首』にも収録されている「名にし負はば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな」という恋歌です。

定方は、三条に屋敷を構えていたことから「三条右大臣」と呼ばれていました。932年、60歳でこの世を去りますが、没後には従一位を追贈されています。

藤原定方の家系は、平安時代の政治史において重要な位置を占めています。彼の父は藤原高藤、母は宮道列子です。彼は藤原山蔭の娘と結婚し、藤原佳節、藤原朝忠、藤原朝成、藤原朝頼など多くの男子を、また醍醐天皇の女御となった藤原能子など多くの女子をもうけました。その子孫たちは、後の日本の歴史に大きな影響を与えることになります。定方の娘は、紫式部の祖母にあたる藤原雅正の妻にもなっています。

藤原定方の生涯は、平安時代の貴族社会の栄華と権力闘争、そして歌への深い愛情が交錯したドラマチックなものでした。彼の存在は、平安時代の歴史と文化を理解する上で欠かせない重要な要素と言えるでしょう。 彼の功績は、政治的成功のみならず、歌人としての才能、そして後世に残る多くの血縁者を通して、今もなお私たちの心に語り継がれています。

もう一度検索