陸曹航空操縦学生

陸曹航空操縦学生とは

陸曹航空操縦学生（Flight Enlistedman Course; FEC）とは、陸上自衛隊航空科において、将来のヘリコプターパイロット、すなわち飛行幹部となるべき陸曹の自衛官を養成する制度です。この制度は、陸上自衛隊独自の育成システムであり、他自衛隊の航空学生制度とは大きく異なります。

概要

陸曹航空操縦学生は、陸曹に昇任後1年以上の勤務経験を持つ、26歳未満（大学卒業者は30歳未満）の陸上自衛官に受験資格があります。外部からの採用は行われず、陸上自衛隊内部での選抜試験によってのみ選考されます。この選抜試験には職種や性別の制限はなく、資格を満たす全ての隊員に受験の機会が開かれています。

陸曹航空操縦学生制度の最大の特徴は、地上部隊での勤務経験を必須としている点です。これは、海上[[自衛隊]]や航空自衛隊の航空学生制度が、入隊直後からパイロット養成に特化しているのとは対照的です。

選抜試験では、一般教養、陸曹教育隊で教育される共通教養（法令、服務、防衛など）、航空適性検査、身体検査などが課せられます。試験に合格すると、陸上自衛隊航空学校宇都宮校へ異動し、操縦教育を受けることになります。

陸曹航空操縦学生には、若い年齢で陸曹に昇任できる高等工科学校出身者が多く見られます。陸上自衛隊のヘリコプターパイロットの約8割がこの課程の出身者であり、本課程は、陸上自衛隊の航空戦力の中核を担うパイロットを養成する上で、重要な役割を果たしています。

女性隊員にも門戸は開かれていますが、その数はまだ少ないのが現状です。

航空学生と比べて、エリミネート率（訓練中にパイロットの資格を失う者の割合）は低いものの、毎回20%程度は訓練から脱落します。

訓練修了後、ウィングマークを取得した学生は、本人の希望や適性に応じて、UH-1多用途ヘリコプター、CH-47輸送ヘリコプター、AH-64戦闘ヘリコプター、AH-1対戦車ヘリコプター、UH-60多用途ヘリコプター、OH-1観測ヘリコプターのいずれかの機種の操縦教育を受けます。固定翼機であるLR-2連絡偵察機については、海上[[自衛隊]]で教育を受けることになります。

本課程修了後は、一旦元の部隊に戻り、その後、教育を受けた機種が配備されている部隊に配属されます。

選考と教育

陸曹航空操縦学生の選考は、一次試験（学科）と二次試験（適性検査、身体検査、体力検定、面接）によって行われます。これらの試験に合格した者のみが、陸曹航空操縦課程（FEC）に入校できます。

入校後は、厳正かつ厳格な学生生活を送ります。まず、9ヶ月間の前期教育では、一般基礎学、専門基礎学、一般教養、操縦に必要な知識などを座学で学びます。続いて、9ヶ月間の中期教育では、TH-480（エンストロム480）練習ヘリコプターを用いた操縦訓練が行われます。この中期教育を修了し、試験に合格することで、ウィングマーク（操縦士徽章）を取得します。

後期教育では、UH-1多用途ヘリコプターやCH-47輸送ヘリコプターなど、実際の部隊で使用される現用機種の操縦訓練を行います。教育期間は機種によって異なり、最も長いAH-64戦闘ヘリコプターでは約26週間の教育が行われます。したがって、FECに入校してから全課程を修了するまでには、最長で2年3ヶ月を要します。

修了後のキャリア

ウィングマークを取得した時点で、学生は「飛行幹部候補生」に指定されます。一般の陸曹が幹部候補生になるためには、自衛隊内部の試験に合格する必要があるのに対し、ウィングマークを取得した陸曹には、内部試験は免除されます。これは、ウィングマーク取得者が操縦士としての勤務を前提とされており、操縦士は幹部自衛官になることが前提となっているためです。この点は、海上[[自衛隊]]や航空自衛隊の航空学生と同様です。

陸曹航空操縦課程修了後は、配属部隊で飛行幹部候補生として約2年間の勤務（副操縦士など）を経た後、陸上自衛隊幹部候補生学校で約6ヶ月間の「一般幹部候補生課程」の教育を受けます。

卒業後は3等陸尉に任官し、操縦士として部隊勤務を行います。また、3等陸尉任官後も一定期間勤務した後、今度は初級幹部として「幹部初級課程（Basic Officer's Course）」、更に中級幹部として「幹部上級課程（Advance Officer's Course）」のために、陸上自衛隊航空学校で教育を受けることになります。

幹部任官後の人事管理についても、海上[[自衛隊]]や航空自衛隊の航空学生とほぼ同様で、操縦任務を主とすることから、大半が1等陸尉または3等陸佐で定年を迎えます。

脚注

航空学校ホームページ
陸曹航空操縦学生たる自衛官の命免等に関する訓令

関連項目

航空科 (陸上自衛隊))
幹部候補生 (自衛隊))
航空学生
航空士 ([[自衛隊)]])
陸軍航空士官学校
砂川文次 - 操縦学生時代に執筆した作品でデビューしている。

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