LR-2

陸上自衛隊の連絡偵察機 LR-2

LR-2は、ビーチクラフト社（現ホーカー・ビーチクラフト社）のスーパーキングエア350をベースに改造された、陸上自衛隊の連絡偵察機です。1999年からLR-1の後継機として導入され、2016年までに順次更新されました。2024年3月末時点で8機が運用されています。

機体の特徴

ベース機からの主な変更点は、ベントラルフィンの大型化程度で、基本的な航空機としての性能は同等です。LR-1と同様にカメラなどの偵察機材を搭載し、偵察任務を遂行できます。LR-1では採用されたガンシップ型は、大幅な改造が必要なためLR-2では見送られました。機体が大型化したことで、患者空輸用のストレッチャーや自動体外式除細動器、生体情報モニタなどを搭載可能になり、緊急患者輸送能力が向上しました。ただし、エアステア式のため、ストレッチャーごと患者を乗降させるにはリフターが必要です。

ベストセラー機をベースにしているため、部品の入手が容易になったことも利点です（LR-1は1987年に生産終了）。塗装はLR-1の迷彩塗装とは異なり、特別輸送ヘリコプターと同じ白灰に青のラインという塗装が採用されています。

運用

1999年1月22日に初号機が納入され、1年間の試験と操縦教育を経て、2000年から配備が開始されました。通常の離陸滑走距離は700mですが、陸上自衛隊の飛行場には滑走路が短い場所もあり、例えば明野飛行場（滑走路長500m）では燃料を減らして滑走距離を短縮したり、より長い滑走路を持つ飛行場や空港で燃料補給を行う必要があります。

LR-2は、陸上自衛隊で最も高速かつ航続距離が長い航空機であり、全天候での運用が可能です。そのため、緊急患者輸送の任務が多く、連絡や偵察任務のほか、実質的には多用途機として運用されています。

2006年には、本州におけるLR-2の集中運用を目的に、第1ヘリコプター団傘下に連絡偵察飛行隊が編成されました。陸上自衛隊では固定翼練習機を保有していないため、パイロット候補は海上自衛隊の小月教育航空群に派遣され教育を受けています。

災害派遣

LR-2は、災害派遣にも出動しています。過去には、那覇～福岡、石垣島～那覇、函館～札幌、釧路～札幌などの区間で患者輸送を行いました。

事故

2017年5月15日、急患搬送のため出動した北部方面航空隊所属のLR-2が、函館空港西方約30kmを飛行中に消息を絶ちました。機体は、厚沢部町・鶉ダム周辺の山中で発見され、乗員4名全員が死亡しました。事故当時、現場付近は雷や濃霧注意報が発令されるなど、天候が不安定な状態でした。

主要諸元

全幅：17.65m
全高：4.37m
全長：14.22m
重量：4.1t
最高速度：580km/h
巡航速度：440km/h
航続距離：2,800km
実用上昇限度：10,700m
最大離陸重量：6,780kg
エンジン：PWC PT6A-60A×2
乗員：2名
乗員以外に8名搭乗可能

配備部隊

北部方面隊
北部方面航空隊（丘珠飛行場）
北部方面航空隊本部付隊
陸上総隊
第1ヘリコプター団（木更津駐屯地）
連絡偵察飛行隊
西部方面隊
西部方面航空隊（高遊原分屯地）
西部方面航空隊本部付隊
第15旅団
第15ヘリコプター隊（那覇飛行場）
第15ヘリコプター隊本部付隊

脚注

公式愛称は「ハヤブサ」、コールサインは「ロメオ」。

関連項目

陸上自衛隊の装備品一覧
TC-90 - 350の原型となったC90を改造した海上自衛隊の練習機。
あおばずく - 同じく350をベースとした、海上保安庁の測量機。

外部リンク

* 陸上自衛隊 - LR-2

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