陸軍刑法

陸軍刑法：大日本帝国陸軍における軍律

陸軍刑法は、かつて存在した日本の法令であり、大日本帝国陸軍に所属する軍人を主な対象として適用された軍法の一種です。この刑法は、時代に応じて二つの主要な形態を取りました。

明治期の陸軍刑法

最初に制定されたのは、1881年（明治14年）に太政官布告として公布された陸軍刑法（明治14年太政官布告第69号）です。これは、当時の軍隊における法秩序を維持するためのものでした。その後、1907年（明治40年）に一般の刑事法である刑法（明治40年法律第45号）が制定されたことを受け、陸軍刑法も新たな段階へと移行します。

1908年（明治41年）には、太政官布告としての陸軍刑法は廃止され、新たに法律の形式で陸軍刑法（明治41年法律第46号）が制定されました。これにより、軍法としての法的基盤がより強固なものとなりました。

陸軍刑法の変遷と改正

陸軍刑法（明治41年法律第46号）は、その後も社会情勢や軍事的な必要性に応じて改正が行われました。1888年12月19日には改正が公布され、特に利敵行為や機密漏洩に対する処罰が強化されました。また、1908年4月10日にも改正が公布され、同年10月1日に施行されています。さらに、1942年（昭和17年）にも一部改正（昭和17年法律第35号）が行われ、時代の変化に対応していました。

陸軍刑法の終焉

しかし、陸軍刑法も時代の流れには逆らえませんでした。1947年（昭和22年）、「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く陸軍刑法を廃止する等の政令」（昭和22年5月17日政令第52号）により、陸軍刑法は廃止されることとなりました。これにより、大日本帝国陸軍の軍律を支えてきた重要な法体系が姿を消しました。また、この廃止に伴い、関連する97件もの法令が消滅、失効、または廃止となりました。

陸軍刑法の構成

陸軍刑法は、大きく分けて総則と罪に関する規定から構成されていました。

第一編　総則：刑法の適用範囲や基本的な原則を定めていました。
第二編　罪：具体的な犯罪行為とその刑罰について規定していました。以下に主な罪の種類を列挙します。
第一章　叛乱ノ罪
第二章　擅権ノ罪
第三章　辱職ノ罪
第四章　抗命ノ罪
第五章　暴行脅迫ノ罪
第六章　侮辱ノ罪
第七章　逃亡ノ罪
第八章　軍用物損壊ノ罪
第九章　掠奪ノ罪
第十章　俘虜ニ関スル罪
第十一章　違令ノ罪

これらの罪は、軍隊の秩序を維持し、軍事行動の円滑な遂行を妨げる行為を処罰するためのものでした。

陸軍刑法は、大日本帝国陸軍という組織を支える重要な法体系であり、その歴史は日本の近代史と深く結びついています。

関連項目

陸軍治罪法
陸軍軍法会議法
陸軍監獄令
軍法会議
海軍刑法
陸海軍刑法ノ適用ニ関スル法律

外部リンク

陸軍刑法（明治41年法律第46号） - ウェイバックマシン（2019年1月1日アーカイブ分） - 中野文庫
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く陸軍刑法を廃止する等の政令　抄 - e-Gov法令検索

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