陽はまた昇る (2002年の映画)

映画『陽はまた昇る』の概要

『陽はまた昇る』は、2002年に公開された日本映画で、佐々部清が監督を担当しました。主演は西田敏行と渡辺謙が務め、物語はビデオテープカセット規格「VHS」の開発にまつわる過程を描いた実話を基にしています。本作はルポルタージュ『映像メディアの世紀』（著：佐藤正明）を元に脚色されています。また、佐々部清監督のデビュー作品でもあり、第15回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞を受賞したことも特筆すべき点です。

ストーリー

1973年、日本ビクターは経営不振に苦しんでいました。この時、開発部門の技術者として勤めていた加賀谷静男は、横浜工場のビデオ事業部長に任命されることになります。彼は定年を控えた身で、現場での経験は豊富でもマネジメントとしての経験は全くありません。彼の任務は、不採算部門であるビデオ事業部を見直し、リストラを実行することでした。

ビデオ事業部はテレビ放送用のテープや機器を生産していましたが、不良品が続出し、返品率が50％を超える事態が発生していました。他社に比べて業績が伸び悩む中、加賀谷は部署間や業者間のコミュニケーション不足が問題の原因と気付きました。彼は従業員や取引先の顔を覚え、職場の人間関係を改善するために自ら動き出します。

その努力が実り、加賀谷は同工場のビデオ開発課を空き倉庫へと移転し、元部下の江口たちを呼び寄せることを決定しました。しかし、部長の加賀谷から具体的な計画は示されないまま、彼らはただ業務用機器の修理に追われる日々を送ることになります。加賀谷は、まず業績を回復させてから本格的な開発活動に取り組む予定でした。

家庭用ビデオカメラの需要に目をつけ、加賀谷は「VTRを家庭向けに生産することができれば、5000億円規模の市場が開ける」と主張し、事業部への予算増強を訴えますが、経営陣には彼のビジョンはあまり理解されませんでした。さらに、街の工場が火災によって全焼し、主力製品であるU規格の生産がストップしてしまい、計画は暗礁に乗り上げます。

VHS開発の始まり

加賀谷は家庭用録画機能に着目し、新たに「システム開発課」を設立します。そこでの技術者たちは他社製品の修理を通じて、市場のニーズを直接体感するようになります。特に、2時間録画が可能なテープの必要性が高まっていることに気付き、加賀谷たちは新規格「VHS」の開発を始めることに決定します。

彼らは、既存の規格を越える新しい規格の策定に悩みますが、持ち込まれた意見や問題を反映させながら進捗を遂げていきます。最終的には、より大きなカセットサイズを採用し、ベータマックスに対抗する製品としてVHSが完成します。加賀谷は、この新規格を広めるために、他のメーカーに対しても無償で技術を公開するという大胆な決断を下します。

1976年には家庭用VTR第一号「HR-3300」が世に出され、VHS規格は広く普及します。加賀谷の退社時には従業員たちが「VHS」の形を作り、彼への感謝の意を表しました。この映画は、技術の発展と人間の絆が生まれる瞬間を描いた感動的なストーリーとなっています。

まとめ

『陽はまた昇る』は、技術者たちの苦悩と希望、そして仲間たちとの絆の物語です。VHS開発に関する実話を通じて、経済成長期の日本における映像メディアの普及の裏側をリアルに描写しています。

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