集合管

腎臓の構造の一部である集合管（しゅうごうかん、英: Collecting duct）は、ネフロンの遠位尿細管から続く管であり、腎臓で生成された尿が集められ、最終的に腎盂へと排出される経路です。この管は単層立方上皮という一層の細胞で構成されており、単に尿を運ぶだけでなく、体内の水分量、電解質バランス、そして酸塩基平衡を精密に調節する、体液の恒常性維持に不可欠な役割を担っています。

集合管の主要な機能の一つは、体内の水分バランスを調節することです。体液の浸透圧が上昇すると、脳下垂体後葉から抗利尿ホルモンであるバソプレッシン（ADH）が分泌されます。このホルモンが集合管の細胞（主に主細胞）にある受容体に結合すると、細胞膜への水チャネル（アクアポリン）の挿入が促され、集合管を流れる尿から大量の水が再吸収されます。これにより、尿の量が減少し、濃度が高まる「尿の濃縮」が起こり、体液の浸透圧が正常範囲に保たれます。

また、集合管は血圧調節にも寄与します。血圧が低下した際に活性化されるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を経て分泌されるアルドステロンは、集合管に作用し、ナトリウムイオン（Na+）の再吸収を促進します。ナトリウムイオンの再吸収には水の移動が伴うため、循環血液量が増加し血圧上昇に繋がります。アルドステロンは同時にカリウムイオン（K+）の排出も促進します。

集合管には、主に水やナトリウムイオンの輸送に関わる主細胞と、体内の酸塩基バランス調節に関わる介在細胞の二種類があります。介在細胞は、プロトン（H+）を尿中に分泌したり、炭酸水素イオン（HCO3-）を再吸収したりすることで、尿のpHを調節し、血液のpHを一定に保つ手助けをしています。

さらに、心房から分泌される心房性ナトリウム利尿ペプチド（ANP）は、集合管でのナトリウムイオン再吸収を抑制する作用があり、これによりナトリウムイオンと水の排出を促進し、体液量の減少および血圧の低下を招きます。

このように、集合管は複数のホルモンによる複雑な制御の下、体液の量、電解質濃度、pHなど、体液組成の最終的な精密調節を担う重要な部位です。腎臓で行われる一連の物質輸送プロセスの最終段階として、集合管は体液の恒常性維持に不可欠な働きをしています。

関連事項
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
尿細管

参考文献
日本獣医解剖学会編『獣医組織学改訂第二版』学窓社、2003年
獣医学大辞典編集委員会編集『明解獣医学辞典』チクサン出版、1991年、ISBN 4885006104

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