雖井蛙流

雖井蛙流（せいありゅう）

雖井蛙流は、日本の剣術の一流派で、江戸時代に剣客の深尾角馬によって創設されました。この流派は、当初は鳥取藩で発展し、今でもその伝統が受け継がれています。現在では、鳥取市から無形文化財として認定されており、その重要性が確認されています。

創始の背景と理念

深尾角馬は、複数の剣術流派を修得した技術者でした。彼は丹石流、去水流、東軍流、卜伝流、神道流、新陰流、タイ捨流、岩流、戸田流などの流派について学びました。彼の哲学の根本には、「井の中の蛙」との喩えがあります。この言葉は、「井の中の蛙は大海を知らない」ということで、自身の限られた視野を打破し、さらなる高みを追求する姿勢を示しています。

この考え方を基にして、彼は「雖井蛙流平法」という名称の流派を創設しました。ここで「平法」と呼ばれるのは、武士として常に心の姿勢を整え、日常の稽古を重視することが求められているためです。この理念は、武士が戦いのためだけでなく、自己の修練と成長のために剣術を学ぶことを促しています。

技法と稽古内容

雖井蛙流の技法は、古風な介者剣術から進化した素肌剣術に改編され、深尾が習得した各流派の技に基づく返し技が中心となっています。これにより、雖井蛙流の技術は非常にダイナミックで、実戦への応用がしやすい構成になっています。この流派では、稽古を通じて体を鍛えるだけではなく、心も磨かれることが重視されています。

また、鳥取藩において雖井蛙流は広まり、流派の文書化も重要な役割を果たしました。特に藩士の上野忠親は、『井蛙語海』という書籍を著し、従来の口伝を記録して伝承の体系化に努めたことが記されています。これにより、雖井蛙流は、鳥取藩全体の文化として広まっていきました。

現代への継承

明治以降も、雖井蛙流は鳥取県内で重要な流派の一つとして存続してきました。松田秀彦、太田義人、山根幸恵などの後継者たちは、この伝統を守り続け、地域の剣道の発展に寄与しています。彼らの活動を通じて、雖井蛙流の教えは新しい世代にも受け継がれ、次第にその存在意義が再評価されています。

雖井蛙流は、その深い哲学と洗練された技法を持ち、今なお多くの武道家や剣道愛好者に影響を与えています。

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