雨だれ (太田裕美の曲)

太田裕美「雨だれ」

太田裕美の音楽活動における記念すべき第一歩となったデビューシングルが、1974年11月にリリースされた「雨だれ」です。この楽曲は、当時珍しかった太田裕美自身によるピアノの弾き語りというスタイルを前面に打ち出した作品として注目を集めました。デビュー当時のキャッチフレーズ「まごころ弾き語り」は、まさに「雨だれ」が持つ温かく真摯な音楽性を表現しており、彼女のアーティストとしての個性と方向性を示すものでした。

楽曲詳細

「雨だれ」は、後に太田裕美の代表曲を多数生み出すことになる名コンビ、作詞・松本隆、作曲・筒美京平によって手掛けられました。編曲は萩田光雄が担当し、シンプルなピアノの旋律と太田裕美の情感豊かな歌声が織りなす、切なくも美しい世界観を創り上げています。楽曲の演奏時間は2分52秒です。

シングルのB面には、「白い季節」がカップリング曲として収められています。こちらも作詞は松本隆が手掛け、作曲・編曲は筒美京平が担当しています。3分00秒のこの楽曲も、「雨だれ」と並んでデビューシングルを彩る重要な一曲と言えるでしょう。

ヒットとその後の評価

「雨だれ」は、その独特なスタイルと叙情的な内容で徐々に人気を獲得し、ヒット曲となりました。この成功が、太田裕美を一躍、日本の音楽シーンにおける期待の新星として押し上げる契機となりました。特に、歌手自らが楽器を演奏し、歌うというスタイルは、当時のアイドル歌謡とは一線を画し、聴衆に強い印象を与えました。

楽曲の評価は高く、リリース翌年の1975年末には、権威ある第17回日本レコード大賞において新人賞を受賞しました。これに加えて、他の音楽祭でも数々の新人賞を獲得し、1975年を代表する新人歌手としての地位を不動のものとしました。「雨だれ」は、単なるデビュー曲にとどまらず、太田裕美のその後の輝かしいキャリアの確固たる基盤を築いた、まさに原点とも言える楽曲です。

別バージョンとカバーの広がり

「雨だれ」は、太田裕美のデビューアルバム『まごころ』にも収録されていますが、シングル盤とは異なるアレンジで楽しむことができます。アルバムバージョンは、より豊かな響きを持つアレンジが施されており、楽曲の新たな側面を発見することができます。

また、この楽曲は世代を超えて多くのアーティストにカバーされています。発表された1974年には小林麻美が自身のアルバム『20才の愛』で、翌1975年には朝倉理恵がアルバム『ひとさし指』でそれぞれカバーしました。さらに、2019年には実力派歌手の岩崎宏美が、筒美京平のトリビュートアルバム『Dear Friends VIII 筒美京平トリビュート』の中でこの名曲を取り上げています。これらのカバーは、「雨だれ」が時代を経ても色褪せない普遍的な魅力と、作曲家・筒美京平の代表作の一つとしての重要性を持っていることを示しています。

関連情報

「雨だれ」は、1974年から1975年にかけての日本の歌謡曲シーンを振り返る上で、重要な楽曲として位置づけられています。太田裕美の初期の軌跡をたどるベストアルバム、例えば『GOLDEN J-POP/THE BEST 太田裕美』や『GOLDEN☆BEST 太田裕美 コンプリート・シングル・コレクション』といった作品には、必ずと言っていいほど収録されており、現在でも容易に楽曲に触れることができます。

インターネット上の歌詞サイト「歌ネット」などでは歌詞が公開されており、美しい詩世界を改めて味わうことが可能です。

「雨だれ」は、太田裕美という一人のアーティストが、自身の音楽性と「まごころ弾き語り」というスタイルで音楽界に確かな足跡を残した、その記念碑的な一曲として、今も多くの人々の心に残り続けています。

もう一度検索