雪吊

雪吊り：日本の冬の風物詩

雪吊りとは、冬季に雪の重みで枝が折れないよう、樹木の枝を縄で支える伝統的な技術です。特に積雪の多い地域で、貴重な樹木を守るために古くから行われてきました。

近年では、土産菓子の名前をきっかけに「雪づり」という発音も耳にするようになりましたが、本来は「雪吊り」と表記し、「雪（を）吊る」という動詞の連用形に「り」が付いたものと解釈するのが自然です。「海釣り」「磯釣り」のような連濁とは異なる性質を持つ言葉と言えるでしょう。

雪吊りの種類と手法

雪吊りの手法は、樹木の種類や大きさ、雪の降り方などによって様々です。代表的な手法として、以下の3種類があります。

りんご吊り: 幹の近くに柱を立て、そこから放射状に縄を張る方法。明治以降、西洋リンゴの栽培が始まり、その実の重みから枝を守るために考案された手法が元になっています。現在では雪吊りの代表的な手法となっています。
みき吊り: 樹木の幹から直接縄を張る方法。高い樹木などに適しています。
しぼり: 枝をまとめて縄で縛る方法。比較的簡素な手法です。

雪吊りの様式

雪吊りの様式は、地域や庭園によって異なります。代表的な様式として、以下の3種類があります。いずれも、りんご吊りを基本として発展したものです。

兼六園式: 石川県金沢市の兼六園で用いられている様式で、最も基本的なスタイルです。荒縄を飾りとして使用し、直接枝に縄を結び付けています。
北部式: 東京都建設局の旧北部公園緑地事務所が考案した様式。藁やこもで作った飾り（ワラボッチ）を使用し、竹の骨組みで縄を支えています。
南部式: 東京都建設局の旧南部公園緑地事務所が考案した様式。北部式とほぼ同じですが、縄の上端を編んだ飾り（バレン）を使用している点が異なります。

雪吊りが行われる場所

雪吊りは、主に日本の東北地方や北陸地方など、積雪量の多い地域で行われます。北陸地方では「雪囲い」と呼ばれることもあります。

代表的な例として、石川県金沢市の兼六園が挙げられます。兼六園では、毎年11月に雪吊りが行われ、500本を超える樹木に約1ヶ月半かけて500人以上の作業員が携わります。降[[雪]]が少ない関東地方でも、東京都新宿区の甘泉園公園などで冬の風物詩として雪吊りが行われています。

雪吊りの歴史と文化

雪吊りは、単なる樹木の保護技術にとどまらず、日本の冬の風物詩として人々の心に深く根付いています。その繊細な技術と、雪景色の中に映える美しい姿は、日本の伝統文化を象徴するものです。 兼六園をはじめとする名園での雪吊りは、多くの観光客を魅了し、日本の文化を世界に発信する役割も担っています。 また、雪吊りの作業には、熟練の技術と多くの時間と労力が費やされており、地域社会の維持にも貢献していると言えるでしょう。

まとめ

雪吊りは、日本の伝統技術であり、冬の風物詩として人々に親しまれています。その種類や手法、様式は多様であり、地域や庭園によって特色があります。雪吊りは、単なる樹木の保護だけでなく、日本の文化や歴史を伝える重要な役割を担っています。

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