雪華図説

雪華図説

『雪華図説』（せっかずせつ）は、下総国古河藩の藩主であった土井利位によって書かれた雪の結晶に関する観察書です。この作品は1832年に発行され、日本における雪の結晶をテーマにした自然科学書の先駆けとして位置づけられています。

江戸時代は、平成年代や令和時代に比べて、気候がより寒冷でした。特に古河は関東平野のほぼ中心に位置し、そのため頻繁に雪に見舞われる地域でもありました。天保年間（1831 - 1845年）は特に寒冷であり、雪の結晶をしっかりと観察することが可能でした。土井利位は、文政5年（1822年）から古河藩主としての地位を確立し、その後天保中期には老中にも就任しました。この時期に、利位はオランダから輸入された顕微鏡を使って雪の結晶を観察し、見たものを『雪華図説』やその続編である『続雪華図説』（天保11年/1840年）にまとめました。

利位は観察を通じて、195種にも及ぶ雪の結晶を発見しました。彼の研究は日本初、また東アジアにおいての雪の結晶に関する顕微鏡観察の記録として、高く評価されています。

『雪華図説』には、雪の結晶を観察するための方法が詳しく記されています。彼は、以下の手順を用いて観察を行うようにしました。

1. 雪が降る可能性の高い夜を選び、あらかじめ黒地の布を冷やしておきます。
2. 冷却した布を使用して降雪を受けることが重要ですが、この際に雪を崩さないように注意します。
3. 積もった雪をピンセットで慎重に取り、その後黒漆器に移します。
4. 吐息がサンプルにかからないように気をつけながら、「蘭鏡」と呼ばれる顕微鏡で観察を行います。

理想的な結晶が見られるためには、-10℃から-15℃の気温が必要であり、大きな結晶が形成され、かつ牡丹雪のように癒合していない状態が求められます。このような厳しい条件の下での観察は、多くの苦労が伴ったことが推測されます。

土井利位の研究はオランダ人のマルチネット（J. F. Martinet, 1729-1795）が著した『格致問答』に多く推定されており、観察法もこの文献に依存していることが示されています。また、雪の結晶の成因については、『天経或問』から引用された幾何的な理論の説明を行い、物質の結合に関する考察を深めています。

この書は私家版として発行され、その出版数は限られていましたが、当時それに基づいたテキスタイルパターンが流行するきっかけとなり、雪華模様の流行をもたらしました。現在においても、古河には雪国とは言えない地でありながら、町の至る所で雪華模様を見ることができます。

参考情報

• - 関連項目: 雪の結晶の観察と研究の年表、花柄（模様）、雪形、鷹見泉石。
• - 外部リンク: 雪華図説 - ウェイバックマシン（2019年アーカイブ）、国立国会図書館サーチ、青空文庫の研究関連資料。

このように、『雪華図説』は土井利位による重要な自然科学の著作であり、貴重な資料として後世に大きな影響を与えています。

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