雲仙市乗合タクシー

雲仙市乗合タクシー

雲仙市乗合タクシーは、長崎県雲仙市において、地域における公共交通手段として運行されていた乗合タクシーサービスです。

このサービスは、長崎県営バスが島原半島内の路線から撤退したことに伴い、その代替となる移動手段を確保するために導入されました。事業の運営は、市内の複数のタクシー会社で組織される「雲仙市タクシー事業組合」が主体となり、運行によって生じる赤字については雲仙市が補助を行う形で維持されていました。

運行開始当初は、雲仙市内の岳・富津地区を結ぶ「上岳線」と、山領地区へ向かう「山領線」の二つの路線が設定されていました。

上岳線では、主に定員10名程度のジャンボタクシー車両が用いられました。一方、山領線は運行開始時には定員11名以上の小型バスが投入され、比較的規模の大きな車両で運行されていましたが、後に上岳線と同様にジャンボタクシーでの運行に切り替えられました。

実際の運行業務は、当初は路線ごとに担当事業者が分かれており、上岳線は吾妻タクシー、今坂タクシー、小浜温泉タクシーの3社が、山領線は前田タクシーが担っていました。しかし、2010年から2011年頃にかけて前田タクシーが廃業したため、雲仙市タクシー事業組合は3社体制となり、山領線の運行も残る3社が共同で担当することになりました。

雲仙市乗合タクシーは、2007年4月1日にその運行を開始しました。地域住民の移動手段として一定の役割を果たしましたが、地域交通のニーズの変化や新たな交通システムの登場に伴い、2022年12月をもって運行を終了しました。そして、その機能は翌2023年1月より、AIを活用した新たなオンデマンド交通サービスである「チョイソコうんぜん」に統合されました。

チョイソコうんぜんへの統合

「チョイソコうんぜん」は、事前に会員登録を行った利用者が電話で予約をすることで、AIが最適な乗車ルートと他の利用者の乗り合わせを計算し、車両を配車するシステムです。地域内の公民館や指定された病院、店舗などが「停留所」として機能し、これらの間で自由に移動することができます。

雲仙市内は四つのエリアに分けられており、各エリア内で運行が行われます。エリアを跨いで移動する場合は、指定された乗換地点で車両を乗り換える仕組みとなっています。運賃は1回の乗車につき200円で、主に定員6名のワゴンタクシー車両が使用されています。

この「チョイソコうんぜん」は、2020年10月に一部エリアで実証実験としてスタートし、段階的に対象エリアを拡大しながら、2022年7月には雲仙市内全域での運行体制が確立されました。そして、2023年1月からは、旧雲仙市乗合タクシーの機能を引き継ぐ形で、予約なしで利用できる「定時定路線運行便」が新たに設定されました。これにより、旧山領線は独立した路線としては廃止され、その一部ルートが上岳線の定時便経由地として組み込まれる形に再編されました。定時定路線便においては、通学定期券の導入や、小学生の通学利用における運賃半額（100円）措置など、地域住民の利用促進を図るための運賃制度も見直されています。

雲仙市では、これ以外にも仁田峠へのアクセス手段（現在運休中）や、過去に長崎空港との連携を試みた試験運行サービス、公共交通空白地域の解消を目指した予約制タクシーなど、様々な地域交通の取り組みが行われてきました。これらの変遷は、地域社会のニーズに合わせて、移動手段の確保と利便性向上に向けた継続的な模索が行われていることを示しています。特に、従来の定時定路線型からAI活用オンデマンド型への移行は、地域交通の新たな可能性を示す事例として注目されています。

もう一度検索