雲崗石窟

雲崗石窟：古代中国仏教美術の粋

雲崗石窟は、中国山西省大同市の西方に位置する、全長約1kmに及ぶ壮大な石窟寺院です。ユネスコの世界遺産にも登録されており、中国の5A級観光地としても知られています。

歴史

元々は霊巌寺と呼ばれ、北魏時代の460年頃、曇曜という僧侶が文成帝に奏上し、武周川の断崖に「曇曜五窟」を開いたのが始まりとされています。これは、太武帝による廃仏後の仏教復興のシンボルとして重要な意味を持ちます。

その後も、大規模な石窟の造営が続き、460年から494年までの期間は「雲崗期」と呼ばれ、中国仏教彫刻史上、重要な時期を形成しました。

特徴

雲崗石窟の様式は、初期の「曇曜五窟」にはガンダーラ美術やグプタ朝の影響が強く見られます。時代が進むにつれて、ギリシア様式の唐草文様など、西方起源の意匠も取り入れられ、当時の建築様式を模した装飾も豊富に見られます。

しかし、494年の洛陽遷都以降は、初期の雄大な質感は薄れ、華奢で力強さに欠ける造形が増加する傾向が見られるようになります。この傾向は、後の龍門石窟へと引き継がれていきます。

雲崗石窟の様式は、涼州の石窟に起源を持つと考えられていますが、その影響は龍門石窟、天龍山石窟、南北響堂山石窟など、広範囲な石窟寺院に及んでいます。

調査と評価

日中戦争中の1937年から1944年にかけて、水野清一、長広敏雄らによって全体的な調査が行われました。彼らによって出版された『雲岡石窟』全16巻32冊は、現在でも中国初期仏教文化の学術資料として高く評価されています。

1961年には中華人民共和国全国重点文物保護単位に、2001年には世界文化遺産に指定されました。

登録基準

雲崗石窟は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること。

雲崗石窟は、中国仏教美術の発展を語る上で欠かすことのできない、貴重な文化遺産です。その壮大なスケールと、東西文化の融合が見られる精緻な彫刻は、訪れる人々を魅了し続けています。

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