曇曜

曇曜（どんよう）

曇曜（生没年不詳）は、中国南北朝時代の北魏において、太武帝による廃仏からの復興期に仏教教団の中心人物となった僧侶です。彼の活動は、北魏仏教の隆盛に大きく貢献しました。

経歴

曇曜の詳細な伝記はほとんど残されていませんが、『魏書』の「釈老志」によると、彼は元々涼州（現在の甘粛省）の僧侶であったとされています。北魏で仏教が復興した後、師賢の後を継ぎ、2代目の沙門統（仏教界の統括者）に就任しました。これは、文成帝の和平元年（460年）のことです。

その後、献文帝から孝文帝の太和年間（477年 - 499年）に至るまで、30年以上にわたり3代の皇帝に仕え、その職を務めました。

業績

曇曜の最大の業績として挙げられるのは、雲崗石窟寺院の造営です。特に、「曇曜五窟」と呼ばれる5体の巨大な仏像は、北魏仏教の性格を象徴するものとして知られています。第16窟から第20窟に位置するこれらの石窟に彫られた大仏は、それぞれ北魏の初代皇帝である道武帝、2代明元帝、3代太武帝、4代南安王、そして5代文成帝の5代の皇帝の姿を模して造られたと言われています。これは、「皇帝即如来」という、北朝仏教特有の思想を具現化したものと解釈されています。

また、曇曜は僧祇戸・仏図戸という制度を創設し、仏教復興事業のための財政基盤を確立しました。僧祇戸は、寺院に財物を提供する農民の戸籍であり、仏図戸は、寺院の造営や維持に必要な物資を生産する人々の戸籍でした。これらの制度によって、寺院は安定した収入を確保し、仏教の普及と発展を支えることができました。

曇曜の活動は、北魏における仏教の隆盛に不可欠であり、その後の中国仏教にも大きな影響を与えました。

参考文献

塚本善隆「沙門統曇曜とその時代」（『支那仏教史研究』「北魏篇」、1942年）
石松日奈子「雲岡中期石窟新論：沙門統曇曜の失脚と胡服供養者像の出現」（『MUSEUM』第587号, 2003年12月, 第16回國華賞受賞）

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