雲弘流

雲弘流について

雲弘流（うんこうりゅう）は、剣術の流派の一つであり、その流祖は井鳥巨雲為信です。この流派は江戸時代中期に熊本藩に伝わり、現在も熊本県で古武道の一つとして存在しています。2014年の時点での宗家は第19代の井上弘道です。

歴史的背景

江戸時代初期、井鳥巨雲が弘流と無住心流を融合させて創始したのが雲弘流の始まりです。弘流は寛文年間に、奥州伊達家に仕えていた樋口七郎右衛門（不墈、元雲）によって設立された流派であり、同じ藩に仕えていた氏家八十郎（後の井鳥巨雲）が樋口から弘流を学び、小出切一雲から無住心流を学ぶことで彼自身のスタイルを形成しました。氏家はその後、江戸に出て名を井鳥巨雲に改名し、二つの流派を結集して雲弘流を確立しました。

こうして成立した雲弘流は、その後江戸と肥後に分かれることとなります。井鳥巨雲の子である八十郎（景雲）は健康が優れなかったため、雲弘流は甥の鈴木弥次郎が後を継ぎました。江戸流派は一時衰退を迎えましたが、比留川彦九郎（雲海）が再興し、以後も「比留川流」として知られるようになりました。江戸の比留川流と肥後の雲弘流との間には良好な交流が続いています。

熊本藩における雲弘流

病弱であった景雲は、従兄の鈴木弥次郎に導かれて剣術の修行を積みました。そして享保9年（1724年）には肥後熊本藩の江戸藩邸に仕官しますが、これは剣術師範としての立場ではなく、小姓としての役割でした。宝暦4年（1754年）に藩主の細川重賢が藩校「時習館」と武芸所「東西榭」を設立する際、景雲は剣術師役として要請されました。彼は初めはこの要請を固辞していましたが、藩主の繰り返しの要請によって、宝暦5年（1755年）に師役を引き受け、多くの弟子を育成しました。こうして景雲が始めた肥後の雲弘流の当主たちは代々「東西榭」の師役を務めることとなりました。

幕末から昭和初期に活躍した17代目の井上平太は、雲弘流の伝統を受け継ぎながらも、細川流（武田流）の騎射や伯耆流の居合いなど、さまざまな武芸に精通しました。また、大日本武徳会からは剣道教士、弓道範士、居合術範士の称号も授与されています。18代目の井上駀伯雲も武徳会精錬証を受けており、雲弘流の発展に寄与しました。

雲弘流の系譜

熊本における雲弘流の系譜は、樋口七郎右衛門不墈を初代とし、無住心流の針谷夕雲を2代、小出切一雲を3代、井鳥巨雲を4代、景雲を5代として継承されています。弘流の樋口不墈と無住心流の針谷夕雲、小出切一雲の間に直接的な交流があったとは解釈されにくいものの、弘流の意義を政策するためか、樋口不墈が先行して位置づけられています。雲弘流を継承する者たちは、「雲」という号を名乗ることが許されています。

技法

雲弘流においては、様々な技法が伝承されています。基本的な表の技法には、柳陰剣、直清刀、三明剣、陰之車、臥龍、離心刀などがあり、それに加えて裏の技法として象水月、霞、燕飛、屈深、晴眼、払当剣が存在します。また、六葉剣や棒の技法も多岐にわたり、形式や戦術を駆使して技を磨いています。

古武道の流派としての雲弘流は、歴史的、文化的価値を有しており、現在も後継者たちによってその特色が保たれています。

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