雲母神社

雲母神社（きらじんじゃ）

新潟県岩船郡関川村の上関地区に位置する雲母神社は、「きらじんじゃ」と読まれます。この神社は1962年（昭和37年）に建立された比較的新しい神社ですが、祀られている男根像や陰陽石などから、子宝成就にご利益があるとされ、遠近から多くの参拝者が訪れています。

由緒と歴史

雲母神社の歴史は、創建年よりもさらに古く、江戸時代中期の延宝年間（1673年から1681年まで）にまで遡ります。当時の上関村に住んでいた渡辺儀右衛門葛延という人物が、村の近くを流れる荒川を行き来する船の安全と、郷土の発展を願って、讃岐国（現在の香川県）にある金毘羅大権現の分霊をこの地に勧請したのが起源とされています。

時代は下り、1960年代に入ると、地域の観光資源である雲母温泉の宿経営者たちが中心となり、関川村観光協会と連携して、温泉街のさらなる振興を図る活動が活発化しました。その一環として、1962年（昭和37年）、渡辺家に代々祀られていた金毘羅宮を雲母温泉を見下ろす高台へと移設し、新たな社殿を建立することになりました。これが、現在の雲母神社の始まりです。

この社殿の建設工事が行われていた際、敷地を整地していた場所から、偶然にも男女の性器の形に似た石、通称「陰陽石」が発見されました。この陰陽石は、古くから日本の民間信仰において、道の安全や子孫繁栄を願う道祖神や塞の神として祀られてきた存在です。神社の創建に伴い、この陰陽石もまた新たな祭祀対象として金毘羅大権現と共に祀られることとなりました。この陰陽石が出土した場所が、かつて米沢藩と越後を結ぶ重要な交易路であった米沢街道沿いにあたることから、街道を行き交う人々が道中の無事を祈願して奉納した石であった可能性が指摘されています。

さらに後の1987年（昭和62年）になると、地元集落の有志によって結成された団体が、町の賑わいを創出しようという思いと、仲間内の気軽な発想から、陰陽石の信仰にちなむ形で、人間の男性器をかたどった木製の大きな男根像を奉納し、祭祀に加えることになりました。この男根像は、瞬く間に雲母神社の象徴となり、特に子宝を願う人々の間で信仰を集める核となりました。

信仰と現在の様子

現在、雲母神社は子宝の神様として広く知られ、健康な子どもを授かることを願う多くの参拝者が、地元はもちろん遠方からも訪れます。参拝者の信仰の篤さは、具体的な形で現れることもあり、神社の賽銭箱を開ける際には、「おかげさまで、無事に子どもを授かることができました。ありがとうございます。」といった感謝の気持ちを綴った手紙が納められていることが珍しくありません。これは、雲母神社が多くの人々の切実な願いに寄り添い、その成就を見守ってきた証と言えるでしょう。

金毘羅信仰という伝統的な信仰を背景に持ちながらも、発見された陰陽石、そして後世加えられた男根像といったユニークな要素が加わることで、雲母神社は地域独自の信仰の形を築き上げてきました。子宝祈願という具体的な願いを持つ人々にとって、雲母神社は希望を託す大切な場所として、これからも多くの人々に信仰されていくことでしょう。

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