雷型駆逐艦

雷型駆逐艦

雷型駆逐艦は、大日本帝国海軍が初めて運用した駆逐艦の艦級です。明治時代の海軍拡張計画に基づき、イギリスのヤーロー社で6隻が建造されました。イギリス海軍のB級駆逐艦を参考にした設計で、1899年から1900年にかけて順次就役し、日露戦争にも参加しました。

設計

本型は、ヤーロー社がアルゼンチン海軍向けに建造していた駆逐艦をベースに、イギリス海軍のB級駆逐艦に準じた設計となっています。船体は乾舷の低い平甲板型で、艦首は波浪に強く、海水が艦内に浸入しにくい亀甲型（タートルバック）となっています。

ボイラーはヤーロー式の石炭専焼水管ボイラーで、蒸気は飽和蒸気、圧力は17.6 kgf/cm2でした。主機は3段膨張4気筒レシプロ蒸気機関で、海上公試では計画値を上回る性能を発揮しました。

兵装は、原型となったイギリス駆逐艦を踏襲し、40口径7.6cm砲1門と40口径5.7cm砲5門を搭載しました。7.6cm砲は艦尾に、5.7cm砲は司令塔上と両舷に配置されました。魚雷兵装として、45cm魚雷発射管2門を上甲板後部に設置しました。

同型艦

明治29年度計画で4隻、明治30年度計画で2隻の計6隻が発注され、1899年から1900年にかけて竣工しました。当初は水雷艇に分類されましたが、1900年に駆逐艦に編入されました。艦の回航は、当初は分解して日本で再組み立てる案も検討されましたが、最終的にイギリスで完成したものを回航する方式が採用され、以後の駆逐艦建造でもこの方式が踏襲されました。

1905年には駆逐艦籍に転籍し、1912年には三等駆逐艦となりました。就役した年に座礁沈没した「霓」を除き、残りの艦は日露戦争に参加しましたが、「雷」と「電」も事故で失われました。しかし、残りの艦は艦歴を全うし、大正10年までに全艦が退役しました。

各艦の概要

雷（いかづち）：1899年竣工。1912年、大湊港で機関破裂事故により沈没。
電（いなづま）：1899年竣工。1909年、函館沖で汽船と衝突し沈没。
曙（あけぼの）：1899年竣工。後に特務艇、雑役船を経て、1925年廃船。
漣（さざなみ）：1899年竣工。日露戦争でロシア駆逐艦を拿捕し、バルチック艦隊司令長官を捕虜とした。後に掃海船、標的船を経て、1916年撃沈処分。
朧（おぼろ）：1899年竣工。後に特務艇、雑役船を経て、廃船。
霓（にじ）：1900年竣工。就役直後に座礁し沈没。

登場作品

アニメ・漫画

ゴールデンカムイ：原作で網走監獄砲撃や輸送任務、五稜郭の戦いに登場。特に五稜郭の戦いでは、前装式砲による反撃を受けて「雷」が沈没しました。

出典

国立国会図書館デジタルコレクション
海軍省/編『海軍制度沿革』
大蔵省印刷局 [編]『官報』
Chesneau, Roger (1988). Conway's All the World's Fighting Ships 1860-1905.
阿部, 安雄「機関 (技術面から見た日本駆逐艦の発達)」『世界の艦船』
石橋, 孝夫「船体 (技術面から見た日本駆逐艦の発達)」『世界の艦船』
海軍歴史保存会『日本海軍史』
造船協会/編『日本近世造船史 明治時代』
高須, 廣一「兵装 (技術面から見た日本駆逐艦の発達)」『世界の艦船』
中川, 務「日本駆逐艦史」『世界の艦船』
日本舶用機関史編集委員会/編『帝国海軍機関史』
福井, 静夫『写真日本海軍全艦艇史』
『官報』

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