電車線・列車線

電車線と列車線：複々線区間の線路区分

電車線と列車線は、かつての国鉄、そして現在のJR路線の複々線区間で用いられる線路区分の名称です。主に近距離の電車系統が走行する線路を電車線、長距離の列車系統が走行する線路を列車線と呼びます。この区別は、運行管理やダイヤ作成といった運転業務において現在も使用されています。ただし、旅客案内ではこの区別はほとんどされず、私鉄では「緩行線・急行線」と分類されることが多いです。

歴史的経緯

国鉄時代、東京・大阪周辺の近距離列車は電化区間のみを走行する電車で運転されていました。一方、長距離列車は蒸気機関車や電気機関車が客車や貨車を牽引する形態でした。この運用上の違いから、複々線区間において線路が電車線と列車線と名付けられるようになったのです。

運行形態と列車種別

多くの路線では、電車線は各駅停車、列車線は速達列車が走行する緩急分離の形態となっています。しかし、電車線・列車線は列車系統による分類であり、必ずしも緩急分離とは限りません。東海道本線の例では、電車線の京浜東北線に快速電車、列車線の東海道線に快速アクティーが設定されていますが、両者の運行に直接的な関連性はありません。

列車種別の案内においても違いがあります。全駅停車の列車は、電車線では「各駅停車」、列車線では「普通」または「快速」と案内されます。これは、電車線は全駅にホームが設置されている一方、列車線は一部駅にしかホームがないためです。

また、「快速電車」と「快速列車」が混在する線区もあります。電車線で通勤形電車を使用した快速電車が運行される一方、列車線でも快速列車が運行され、停車駅数の関係で「普通列車」の方が「快速電車」より停車駅が少ないという逆転現象も見られました。

関西地区の特異性

国鉄時代、関西地区では電車線に「急行電車（急電）」が運行されていました。これは、急行料金を必要としない速達電車で、急行列車とは異なるサービスでした。しかし、1958年のダイヤ改正で「快速電車」に改称され、中距離の「普通列車」と統合されました。

主要路線の例

東日本旅客鉄道

東海道本線（東京～横浜・大船間）: 電車線は京浜東北線、列車線は東海道線。山手線や横須賀線が並走する区間もあります。
東北本線（東京～大宮間）: 電車線は京浜東北線、列車線は上野[[東京ライン]]、宇都宮線、高崎線、常磐線など。山手線や中央線快速も並走します。複雑な線路配置が特徴です。

西日本旅客鉄道

* 東海道本線・山陽本線（草津～西明石間）: 方向別複々線で、列車線が外側、電車線が内側を走行する区間と、線路別複々線区間があります。新快速など速達列車が列車線を走行します。ラッシュ時など、一部の快速電車は列車線を走行するダイヤが組まれています。

常磐線の特異なケース

常磐線（綾瀬～取手間）は、緩急分離複々線ですが、種別は系統分離も含む特殊な形態です。柿岡地磁気観測所への影響を考慮した交直切替の事情や、都心アクセスにおける制約などから、近距離電車と中・長距離列車が同じ快速線を走行します。かつては「快速電車」の方が「普通列車」より停車駅が多いという矛盾がありましたが、現在は停車駅が統一されています。

まとめ

電車線と列車線は、日本の鉄道の歴史と運行形態を理解する上で重要な概念です。その運用は時代や路線によって変化しており、単純な緩急分離とは異なる複雑な側面も持ち合わせています。この解説が、電車線と列車線に関する理解の一助となれば幸いです。

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