霊魂の不滅

霊魂の不滅

『霊魂の不滅』(原題: Körkarlen)は、1921年に製作されたヴィクトル・シェストレム監督によるスウェーデンのサイレント映画です。この作品は、セルマ・ラーゲルレーヴの小説『幻の馬車』を原作としており、サイレント映画でありながらもその映像美や物語構成において革新的なアプローチを見せている点が大きな特徴です。

ストーリー

物語は大晦日、アルコールに依存し、ダメな中年男として知られるダヴィッド・ホルムを中心に展開します。彼は仲間たちから「幻の馬車」という不気味な噂を耳にします。それは、年の終わりに死んだ罪人の魂が、死神に付き従い、次の年の間に死者の魂を集める使命を果たさなければならないというものです。この噂を聞いて、彼は一時の興奮から飲みすぎてしまい、新年になる直前に命を落としてしまいます。

彼の霊魂は墓地に横たわる自分の死体を見つめる中、突如として現れた「幻の馬車」に乗る死神の馭者は、ダヴィッドのかつての友人ゲラーでした。ゲラーはダヴィッドに、彼がかつてどれほど家族を大切にしていたかを語り、酒に溺れ、愛する妻アンナや救世軍の少女エディスに対してひどい仕打ちをしていたことを非難します。ダヴィッドはゲラーの導きによって、自らの過去を振り返り、自身の罪を悔い改めるための旅に出ることになります。

キャスト

この映画のキャストは、ダヴィッド・ホルムを演じるシェストレム自身を含め、アンナにヒルダ・ボルグストレム、死神の馬車の馭者であるゲラーにトーレ・スヴェンボルグと、実力派が揃っています。アストリッド・ホルムはシスター・エディスとして登場し、その他にもサポートキャストが物語をより深くしています。

製作と公開

シェストレムは原作に深い感銘を受け、1920年春に映画の脚本を執筆しました。作品は1921年1月1日にスウェーデンで公開され、その後すぐに国際的にも上演され、多くの評価を受けました。当時、フラッシュバックや二重露光を駆使した映像表現は革新的で、観客に強い印象を与えました。この作品を通じて描かれているのは、人間の尊厳が冷酷な社会の中でどのように崩壊していくのか、そしてその結果として狂気に陥る人々の姿です。

評価

現在では、『霊魂の不滅』はスウェーデン映画史の中で最も重要な作品の一つと認識され、シェストレム監督の最高傑作とも言われています。本作は多くの後続の映画監督に影響を与え、特にイングマール・ベルイマンはこの映画を「本当に衝撃的な最初の映画体験」と回顧しています。映画評論家たちは、この作品が与えた影響について多くの議論を交わしています。

このように『霊魂の不滅』は、サイレント映画の枠を超えて人間の存在や価値について深い問いを投げかけており、映画史における特別な地位を持っているのです。

もう一度検索