霜多正次

霜多正次

霜多正次（しもた せいじ、1913年9月5日 - 2003年4月16日）は、沖縄県出身の小説家であり、元日本共産党員として知られています。

生涯

沖縄県国頭郡今帰仁村で生まれ、沖縄県立第一中学校から旧制五高へ進学。五高在学中に梅崎春生と親交を深め、文学を志すようになります。東京帝国大学英文科を卒業後、1940年に応召。各地を転戦した後、ブーゲンビル島に配属されます。1945年5月、戦況が悪化する中でオーストラリア軍に投降し、捕虜となりました。

復員後は故郷に戻らず、東京で文学活動を開始。新日本文学会の事務局に勤務しながら小説を執筆します。1950年、雑誌『新日本文学』に発表した「木山一等兵と宣教師」が評価され、作家としての地位を確立しました。

西野辰吉、窪田精、金達寿らと交流を深め、1953年には初めて沖縄本島に帰郷。米軍占領下の沖縄の実情を目の当たりにし、沖縄を題材とした作品を執筆するようになります。1956年からは長編『沖縄島』を『新日本文学』に連載し、毎日出版文化賞を受賞しました。

1957年、西野・窪田・金らとリアリズム研究会を結成し、「現実変革の立場に立つリアリズム」を追求。新日本文学会では幹事を務めますが、武井昭夫らとの文学方法論の対立が表面化。1964年の第11回大会において、幹事会の報告草案が部分的核実験禁止条約の支持を一方的に表明したことや、アヴァンギャルドとリアリズムの統一という特定の創作方法を押し付けようとしたことに異議を唱え、江口渙、西野辰吉と共に、相違点を保留し、合意できる点に絞った対案を提示しようと試みます。しかし、対案は受け入れられず、大会の秩序を乱したとして新日本文学会を除籍されました。背景には、新日本文学会と日本共産党との核兵器対策における路線の対立があり、日本共産党の意向に沿った霜多らは排除される形となりました。

1965年、日本民主主義文学同盟の創立に際して副議長に選出され、新日本文学会に代わる民主主義文学運動の発展に尽力。1971年には、1960年代の沖縄を描いた長編『明けもどろ』で多喜二・百合子賞を受賞。この時期を中心に、沖縄や日本の現実の矛盾を深く追求する長編小説を多数発表しました。1975年には文学同盟の議長に就任し、1983年まで務めました。

1983年に文学同盟議長を退任後は、同人誌『葦牙』を中心に活動。1987年には文学同盟を退会。その後、日本共産党を除籍され、自らの文学活動を回顧する『ちゅらかさ』を発表しました。

沖積舎から全5巻の全集が刊行されています。

文学の特徴

霜多正次の作品は、沖縄の歴史や文化、米軍占領下の沖縄の現実を深く掘り下げ、社会主義的な視点から日本の矛盾を鋭く批判している点が特徴です。自身の戦争体験や政治活動を通して得た知見を基に、リアリズム文学を追求し、社会変革を目指しました。

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