霧の会議

霧の会議について

松本清張の『霧の会議』は、彼が生み出した長編小説であり、1984年から1986年にかけて『読売新聞』に連載され、その後1987年に文藝春秋から単行本として出版されました。本作品は、1982年に発生したロベルト・カルヴィ怪死事件を基にしており、ヨーロッパを舞台にしたサスペンスが展開されます。物語は、ロンドンのテムズ川に架かるブラックフライアーズ橋の工事用足場からイタリア人の死体が発見されるシーンから始まります。死体はフリーメーソン・ロッジP2のナンバー3、リカルド・ネルビのものであり、ロンドンの当局は自殺として処理しようとしますが、新聞記者の八木正八は他殺の可能性を感じ始めます。

あらすじ

物語は、ロンドンのブラックフライアーズ橋において発見されたイタリア人男性の首吊り死体から始まります。この男性はフリーメーソン・ロッジP2のメンバーであるリカルド・ネルビであり、彼の死がもたらす陰謀と愛の葛藤が繰り広げられていきます。ロンドン当局は自殺と結論付けそうですが、八木正八は彼の動向を追っており、他殺の可能性に疑念を持っています。

物語の中心には、高平和子というカトリック信者の女性がいます。彼女は大学助教授の木下信夫と不倫関係にあったものの、ネルビの死の現場を目撃してしまいます。以降、和子と信夫は組織に追われる身となり、ロンドンからフランスへ逃亡しますが、そこでもマフィアの脅威が迫ることとなります。二人の逃避行を通じて、和子の心の葛藤や愛の行方も描かれます。

主な登場人物

• - 八木正八: 中央政経日報のローマ支局の助手で、ネルビの動向を追う。
• - 高平和子: カトリック信者の女性。木下信夫と不倫関係にある。
• - 木下信夫: 大学助教授で、和子にラテン語を教えている。
• - 高平仁一郎: 和子の夫。趣味で絵を描いている。
• - 北野阿佐子: 銀座の高級クラブのホステス。
• - 小島春子: フリーのジャーナリスト。
• - 植田伍一郎、戸崎秀夫: 「リブロン」に関わるキャラクター。
• - 桐原敏雄、ローリー・ウォーレス: それぞれ大使館の参事官、新聞社の助手。
• - イゾッピ: ローマ市警の刑事。

作品の舞台とモデル

本作はイギリス、フランス、モナコ、イタリアなどの実在の地名を登場させており、読者はヨーロッパを旅しているような感覚を味わうことができます。特に、ロンドンのヒルトンホテルやフィレンツェの聖堂など具体的な場所が描かれ、作中の事件にリアリティを与えています。また、登場する人物の中には、実在の歴史的な人物がモデルになっており、その背景にある事件や社会の闇を浮き彫りにしています。

結論

『霧の会議』は、松本清張が描く複雑な人間関係と陰謀に満ちた物語であり、彼ならではのサスペンスが際立っている作品です。愛や裏切り、組織の陰謀が絡み合い、読む者を引き込む魅力に満ちています。松本清張の世界観を味わうには、ぜひ手に取ってみることをお勧めします。

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