ロッジP2

ロッジP2：イタリアを揺るがした秘密結社の真実

ロッジP2（Loggia P2）、正式名称プロパガンダ・ドゥエ(Propaganda Due)は、イタリアにおけるフリーメイソン組織「イタリア大東社」傘下のロッジとして1877年に発足しました。当初は「プロパガンダ・マソニカ」の名でトリノを拠点に活動していましたが、ムッソリーニ政権下の1925年に秘密結社禁止法が施行されたため活動を停止。第二次世界大戦後の1945年に活動を再開しました。しかし、1960年代までは政治的色彩は薄く、静かな活動にとどまっていました。

ジェッリの台頭と反共主義

1966年、元ファシスト党員のリーチオ・ジェッリがロッジP2に入会すると状況は一変します。ジェッリはイタリア社会運動(MSI)の幹部であり、「オデッサ」と呼ばれるナチス戦犯の逃亡支援ネットワークにも関与していた人物でした。ジェッリはロッジの活動を活発化させ、1971年には代表（グランド・マスター）に就任します。

冷戦下のイタリアでは、イタリア共産党が勢力を拡大していました。この状況に危機感を抱いたジェッリは、反共主義を掲げ、右派政治家、軍人、そして南米の反共軍事政権の人物などをメンバーに迎え入れました。ロッジP2は、いわば冷戦下における国際的な反共主義者のネットワークへと変貌を遂げていきます。

違法活動と国際的な繋がり

ロッジP2は、反共主義運動の名の下、違法な活動も展開しました。左翼活動家への弾圧に加え、南米の軍事独裁政権への武器供与、さらには資金援助まで行っていたことが明らかになっています。アルゼンチンの「汚い戦争」においても、ジェッリらは資金面でビデラ政権を積極的に支援しました。これらの資金は違法に調達されたものでした。フォークランド紛争で使用されたエグゾセ・ミサイルも、ロッジP2が調達したものであることが判明しています。

ジェッリやメンバーは、南米に逃亡した元ナチス将校であるクラウス・バルビーやオットー・スコルツェニーとも関係を持っていました。さらに、CIAとの繋がりや「グラディオ作戦」への関与も指摘されています。

認証取り消し、秘密結社の継続

こうした違法行為が明るみに出たことで、1976年にロッジP2はイタリア大東社から認証を取り消され、フリーメイソンから破門されました。しかし、ジェッリらは秘密裏に活動を続け、事実上の秘密結社として存在し続けました。

1977年には、日刊紙「コリエーレ・デラ・セラ」の経営に介入し、左派編集長を解雇させました。この介入にはバチカン銀行の違法資金が利用されていた疑いがあります。

ボローニャ駅爆破事件とP2事件

1980年8月2日、ボローニャ中央駅で発生した爆弾テロ事件（85名死亡、200名以上負傷）にも、ロッジP2の関与が疑われています。捜査妨害の罪でジェッリとイタリア軍情報局員が有罪判決を受けました。

1981年3月、ジェッリの自宅捜索で932名ものメンバーが記載されたリストが発見されました。この「P2事件」はイタリア政財界を揺るがし、首相の辞任にまで発展しました。リストには、元王太子、現役将軍、国会議員、閣僚、実業家（ベルルスコーニを含む）、大学教授などが含まれていました。

カルヴィ暗殺事件とその後

1982年には、ロッジP2メンバーでアンブロシアーノ[[銀行]]頭取だったロベルト・カルヴィが暗殺される事件が発生しました。この事件にもジェッリが関与した疑いがあり、ジェッリは逮捕・起訴されました。

ロッジP2とそのメンバーの活動はイタリア内外で批判を浴び、多くの人が罪に問われ、暗殺された者もいます。しかし、逃亡した者も多く、その影響は現代イタリアにも及んでいると言われています。ジェッリは2015年に死去しました。

主要メンバー

リーチオ・ジェッリ（最後の代表）
ヴィットリオ・エマヌエーレ3世（元イタリア王太子）
ミケーレ・シンドーナ（弁護士）
ロベルト・カルヴィ（アンブロシアーノ[[銀行]]頭取）
シルヴィオ・ベルルスコーニ（元イタリア首相）
ピエルト・ムスメキ（イタリア軍情報局員）
アンジェロ・リッツオーリ（コリエーレ・デラ・セラ社主）
その他、多数の政治家、軍人、実業家

ロッジP2事件は、イタリアの闇の部分を明らかにしただけでなく、現代政治における秘密結社や陰謀論への関心の高まりにも繋がった重要な出来事と言えるでしょう。

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