露土戦争 (1568年-1570年)

露土戦争 (1568-1570年)

露土戦争は1568年から1570年にかけて、ロシア・ツァーリ国とオスマン帝国の間で繰り広げられた重要な軍事衝突です。この戦争は、オスマン帝国側では「アストラハン遠征」として記録されており、アストラハン・ハン国の首都を巡るロシアの拡張とオスマンの影響力の対立が背景にあります。

背景

1547年、ロシアのイヴァン4世（後の荘厳なるツァーリ）はアストラハン・ハン国を征服し、ヴォルガ川沿いに新たな砦を設立しました。これに対抗する形で、オスマン帝国のスルターン・セリム2世はバルカン半島の大部分を支配し、クリミア・ハン国と連携を図るようになりました。オスマン帝国がクリミア・ ハン国を従属させて以降、ロシアとの関係は悪化し、クリミア・タタール人による攻撃が相次ぐようになります。特に1556年のアストラハン併合は、ロシアとオスマン帝国間の対立を一層深めることとなりました。

戦争の経過

この戦争は、ロシアが同時にリヴォニア戦争を抱えていた時期に発生しました。1559年、オスマン帝国軍はアストラハン攻略のために派遣され、クリミア・ハン国のデウレト・ギレイ・カーンと合流しました。大規模な運河建設の計画が立てられ、アストラハンへの攻撃が試みられましたが、物資の不足やオスマン軍の内部事情により、建設は中断を余儀なくされました。再度、攻撃の準備が整った時点で、指揮官カシム・パシャはロシア側からの援軍到着の噂に動揺し、撤退の決断を下しました。残された兵力は北カフカースに向かい、最終的には疲弊しつつアゾフへ帰還しました。

戦後の影響

1570年にはコンスタンティノープル条約が締結され、ロシア・ツァーリ国はヴォルガ川の通行権を得ました。この戦争は、オスマン帝国の衰退につながるとは限らず、翌年にはレパントの海戦での敗北があったものの、その後も勢力を保ち続けました。ロシアもまた、この戦争を通じて外交経験を重ね、18世紀に入ってから本格的に黒海への進出を果たすことになります。このように、露土戦争は両国間の長きにわたる対立の枠組みを形成する重要な出来事となりました。

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