青い山脈 (映画)

『青い山脈』

概要

『青い山脈』は、作家・石坂洋次郎が同名の小説を原作とする映画で、日本の映画史において特に重要な作品の一つです。この作品は、1949年、1957年、1963年、1975年、そして1988年の5回にわたって製作され、各作品とも多くの人々に愛されました。

最初の1949年版は今井正監督によるもので、主演には原節子と池部良が名を連ねています。公開時にモノクロ映画として制作され、興行的にも成功を収め、映画界において一つの金字塔となりました。主題歌の『青い山脈』は、広く国民に知られる旋律となりました。この曲の作詞は西條八十、作曲は服部良一によるもので、以降のリメイクでも使用されています。

作品の背景

本作の制作は、東宝と松竹の間で映画化権を巡る競争がありましたが、最終的に東宝がその権利を獲得することになりました。しかし、この決定に対して映画製作に反対する声もありました。特に、当時の映画界にはプチブル作家やブルジョア新聞に連載された作品に反対する意見が存在しました。その中で、監督の今井は「若い男女が一緒に歩く姿を描く意義」を主張し、作品の意図を堅持しました。

制作にあたっては、プロデューサーの藤本真澄が独立プロを立ち上げ、共同制作が行われました。脚本の執筆は当初小国英雄が担当していましたが、今井監督との意見対立から降板し、井手俊郎がその後を引き継ぎました。井手の脚本は、その後のリメイク作品の多くに影響を与えています。

各作品について

1949年の作品は、静岡県下田市などを舞台に撮影され、今井監督色が強く出ています。花火やカモメの描写にはアニメーションも取り入れられ、視覚的にも楽しませてくれました。また、名場面の一つに「恋しい恋しい私の恋人」というラブレターの文面が採り上げられ、その際の誤記「変しい変しい私の変人」が広く知られています。

1957年版や1963年版では、時代背景や設定が変更され、ストーリーにも現代の視点が追加されることで新たな解釈が加えられました。1975年と1988年のリメイクも大胆な再構築を行い、各年代における時代感覚を反映させながら作品が進化してきました。

終わりに

『青い山脈』は、石坂洋次郎の文学を基盤に持つ大衆的な感性を生かした作品として、時代と共に成長し続けています。映画としてだけでなく、音楽やドラマでも親しまれ、多くのファンに愛される不朽の名作であることは間違いありません。

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