青春の海

青春の海

『青春の海』（せいしゅんのうみ）は、1967年（昭和42年）1月3日に封切られた日本の長編映画です。日活によって配給され、西村昭五郎が監督を務めました。原作は作家・石坂洋次郎の短篇小説「ザルと空気銃」が基になっており、青春期の揺れ動く心と、地方の小さな町で芽生える人間模様を瑞々しく描いています。

概要

本作は、当時を代表するスターである吉永小百合が、若く真面目な中学教師を演じたことで話題となりました。共演には、チンピラでありながらも純朴な一面を持つ青年役に渡哲也が配され、二人が織りなす淡い恋の行方が物語の主軸となります。

撮影は風光明媚な伊豆の下田で行われ、潮風香る港町や自然豊かな風景が、登場人物たちの心情と寄り添うように映し出されます。劇中には伊豆急行の電車も登場し、当時の地域の雰囲気を伝えています。また、後に俳優として大成する水谷豊が、デビュー間もない頃に生徒役として出演しており、オープニングタイトルにもその名が確認できます。

あらすじ

物語の主人公は、東京から伊豆下田の公立中学校へと転任してきた三宅杏子です。生来の真面目さと一本気な性格が災いし、理不尽な学校方針に反発して校長と衝突した結果、東京での教職を追われる形で下田に赴任することになったのです。洋服デザイン会社を辞めたばかりの妹、千加とともに下田に到着した杏子は、紹介された下宿に落ち着きます。その隣家には、奇しくも東京から下田への電車内で偶然乗り合わせていた、山崎次郎という粗野ながらもどこか憎めない青年が暮らしていました。

杏子は赴任した中学校で、轟音を響かせながらバイク通学する問題児、江川タケシが在籍するクラスの担任となります。杏子はタケシの家庭環境を知るため家庭訪問を行いますが、そこで目にしたのは、隣家の次郎とタケシが花札に興じている姿でした。ある日、タケシが突然失踪するという事件が起こります。生徒の安否を案じた杏子は、成り行きで次郎とともに深夜の町や海辺を奔走し、タケシを探し回ります。この一件をきっかけに、女教師である杏子とチンピラである次郎が深夜に連れ立って行動していたことが、小さな港町でたちまち噂となって広まってしまうのでした。周囲の好奇の目に晒されながらも、杏子と次郎は互いの心に惹かれていきます。

キャスト

主演の吉永小百合が教師・三宅杏子を、渡哲也が青年・山崎次郎を演じました。杏子の妹・千加役には和泉雅子、次郎の兄弟である山崎宏一、潤、明夫をそれぞれ川地民夫、和田浩治、山内賢が演じています。山崎家の当主・源治には笠智衆が配されました。生徒の江川タケシ役は小倉一郎が務め、デビュー間もない水谷豊も生徒の一人として顔を見せています。

スタッフ

監督は日活で多くの作品を手がけた西村昭五郎。原作は石坂洋次郎の小説「ザルと空気銃」によります（新潮社版）。脚本は三木克巳、撮影は姫田真佐久が担当し、伊豆の美しい光景をスクリーンに収めました。音楽は現代音楽の巨匠である黛敏郎が手がけています。

主題歌

主題歌は、映画のタイトルと同じ「勇気あるもの」です。作詞は佐伯孝夫、作曲は吉田正。これを主演の吉永小百合と、当時の人気グループサウンズであるトニーズが歌唱しました。

作品データ

本作は上映時間89分（8巻、2,448メートル）のカラー作品です。フォーマットはシネマスコープ・サイズ（1:2.35）、撮影速度は24fpsで、音響はWestrex Recording Systemによるモノラル録音です。映倫番号は14751が与えられました。

同時上映

本作の公開時には、同じく石坂洋次郎原作の純愛映画『北国の旅情』が同時上映されました。こちらは西河克己が監督し、舟木一夫、十朱幸代が出演しています。

外部リンク

青春の海 - allcinema
青春の海 - 日本映画データベース
青春の海(1967) - 日本映画情報システム
青春の海 - 日活

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