青木得三

青木得三

青木得三（あおき とくぞう、1885年2月26日 - 1968年7月31日）は、日本の文官、経済学者であり、財政学を専門としていました。経済学博士の学位を持ち、東京帝国大学法科大学を首席で卒業しました。秋田県南秋田郡秋田町（現在の秋田市）で生まれました。

生涯

1885年（明治18年）に秋田県で生まれた青木得三は、幼少期に父親の転勤で各地を転々としました。旧制和歌山中学、旧制新潟中学校を経て、旧制第一高等学校に進学。1909年（明治42年）に東京帝国大学法科大学を首席で卒業後、大蔵省に入省しました。

大蔵省では、第一次世界大戦後の講和条約に関連し、ロンドン・パリに駐在。帰国後は、若槻禮次郎、浜口雄幸の両大蔵大臣の秘書官を務め、1929年（昭和4年）には大蔵省主税局長に就任しました。

1931年（昭和6年）に大蔵省を退官後は、報知新聞社の論説委員として活動する傍ら、中央大学法学部で財政学の講義を担当。戦後の1948年（昭和23年）には中央大学商学部長、1949年（昭和24年）には同経済学部長に就任しました。晩年は千葉商科大学教授を務めました。

逸話

少年時代には、三国干渉や旅順租借といった出来事に際し、ロシア帝国の横暴に憤慨し、征露論者となりました。一高時代には日露戦争の勃発を受け、『征露歌』（ウラルの彼方）を発表。その他にも寮歌を作詞しましたが、当時の「尚武」の校風を反映した、好戦的な内容のものも含まれています。もっとも、青木自身は征露論者ではあったものの、好戦論者ではなかったと述べています。

業績

青木得三は、財政学の研究者、教育者として多くの業績を残しました。大蔵省での実務経験を踏まえた理論は、日本の財政政策に大きな影響を与えました。また、中央大学や千葉商科大学での教育活動を通じて、多くの後進を育成しました。

著作

『貨幣論』 巌松堂書店、1916年。
『銀行法論』 巌松堂書店、1924年。
『銀行論』 巌松堂書店、1928年。
『日本国債論』 日本評論社、1928年。
『租税講話』 改造社、1932年。
『財政学概論』 賢文館、1933年。
『地方財政の理論』 巌松堂書店、1934年。
『井上準之助伝』 1935年。
『税制改革案批判』 日本講演協会、1936年。
『貨幣銀行通論』 巌松堂書店、1937年。
『歳入歳出詳論』 巌松堂書店、1938年。
『財政学原理』 賢文館、1941年。
青木得三・山口忠夫 『国家財政と国民経済』 有斐閣、1941年。
『戦費を生む力』 大政翼賛会宣伝部、1943年。
『太平洋戦争前史』 1950年-1952年。
『若槻礼次郎・浜口雄幸』 時事通信社「三代宰相列伝」、1958年。
『おもいで : 青木得三自叙伝』 - (財)大蔵財務協会、1966年。

作詞した寮歌

征露歌（ウラルの彼方） - 1904年2月
亜細亜の東 - 1904年3月
平沙の北に - 1905年3月
春は桜花咲く - 1906年3月
としはや已に - 1908年3月
時は流れぬ五十年 - 1940年7月

参考文献

青木得三 『おもいで : 青木得三自叙伝』 (財)大蔵財務協会、1966年11月。
竹内洋 『日本の近代12 : 学歴貴族の栄光と挫折』 中央公論新社、1999年4月。ISBN 4124901127。
小川寛大 『「海行かば」を歌ったことがありますか』 エイチアンドアイ、2006年1月。ISBN 4901032844。

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