財政学

財政学とは

財政学は、政府の経済活動、すなわち財政を研究する学問分野です。経済学の一分野として位置づけられることが多く、公共[[経済学]]と同義とされることもあります。その起源は、官房学と古典派[[経済学]]が融合したドイツにあります。

財政学の歴史

官房学と古典派[[経済学]]の融合

財政学の基礎は、古典派[[経済学]]と官房学の融合によって築かれました。アダム・スミスは、古典派[[経済学]]の立場から財政を論じ、夜警国家観を提唱しました。彼は、公平、明確、便宜、徴税費最小という4つの課税原則を提唱しました。

これらの古典派[[経済学]]の考え方はドイツにも伝わり、カール・ラウは、官房学に古典派[[経済学]]を取り入れることで、財政学を経済学から独立した学問として位置づけました。

ワグナーの財政学

ラウの財政学は、アドルフ・ワグナーによってさらに発展しました。ローレンツ・フォン・シュタイン、アルベルト・シェフレらと共に、ドイツ正統派の財政学を完成させました。

財政社会学

ヨーゼフ・シュンペーターは、財政社会学という構想を持っていました。彼は、近代国家が租税国家であることを指摘し、財政学の社会的な側面を重視しました。

日本では、神野直彦、金子勝、大島通義、池上岳彦、井手英策などがこの立場を代表する学者として知られています。

スウェーデン学派の財政学

クヌート・ヴィクセルを祖とするスウェーデン学派も、財政学の発展に大きく貢献しました。ヴィクセルは、課税理論の研究を行い、マルギット・カッセルらは新経済学派の財政学を提唱しました。

マスグレイブの公共[[経済学]]とブキャナンの公共選択論

現代の財政思想を構築したのは、リチャード・マスグレイブとジェームズ・M・ブキャナンです。マスグレイブは、ケインズ[[経済学]]をベースに、新古典派総合の財政学を構築しました。一方、ブキャナンは、公共選択論によって、政治の力が財政赤字を拡大させる可能性を指摘し、「小さな政府」を支持しました。

財政学の対象

財政学が対象とするのは、政府の経済活動です。政府の役割は多岐にわたりますが、それらを実行するためには財源が必要となります。財政学では、資金調達の方法や効果的な支出について研究します。

財政学で扱う内容

財政学では、以下のような内容を扱います。

政府支出: 政府がどのような分野に支出を行なうべきか、その効率性や効果について研究します。
財政政策: 政府が経済の安定や成長のためにどのような政策を採るべきかを研究します。
公共財: 市場メカニズムだけでは供給が難しい公共財の供給について研究します。
政治過程の分析: 公共選択や足による投票の理論など、政治的な意思決定が財政に与える影響について研究します。
租税: 課税の公平性や効率性について研究します。
直接税と間接税: 税の種類による経済への影響の違いについて研究します。
所得の再分配: 税や社会保障を通じて所得格差を是正する方法について研究します。
公債: 公債発行の経済的影響や、将来世代への負担について研究します。
政府間財政: 国と地方の財政関係や、税源の移譲について研究します。
「量入制出」と「量出制入」: 予算編成のあり方について研究します。

「量入制出」と「量出制入」

予算編成には、「量入制出」と「量出制入」という2つの考え方があります。

量入制出: 税収を予測してから歳出を決める方法で、一般的に民主主義的とされます。財政難を克服するためには、優先度の低い案件から削減し、効率的な予算配分を考えます。
量出制入: 歳出を決めてから税収を決める方法で、一般的に権威主義的とされます。ただし、民主主義が急進化すると財政が膨張する可能性があります。

これらの考え方は、国家観や金融政策、税と保険など様々な要素が絡み合い、複雑な議論を生み出します。

まとめ

財政学は、政府の経済活動を分析し、より良い社会を実現するための学問です。その歴史は長く、多様な学派や理論が存在します。現代社会においても、財政問題は重要な課題であり、財政学の研究はますます重要になっています。

参考文献

神野直彦『財政学』（有斐閣、2002年）
アンドリュー・デウィット「現代財政社会学の諸潮流」大島通義・神野直彦・金子勝編著『日本が直面する財政問題』（八千代出版、1999年）
池上惇『財政思想史』（有斐閣、1999年）
『図説 日本の財政』（東洋経済新報社、毎年刊行）
貝塚啓明『財政学 第2版』（東京大学出版会、1996年）
井堀利宏『財政学 第2版』（新世社、1997年）
Joseph E. Stiglitz, Economics of the Public Sector W. W. Norton & company, 3rd ed., 2000

関連項目

地方[[財政]]
* 租税法

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