青枯病菌

青枯病菌（Ralstonia solanacearum）について

青枯病菌は青枯病の原因となる病原細菌で、学名は Ralstonia solanacearum といいます。この細菌は、元々は Pseudomonas 属に属していましたが、1996年に現在の Ralstonia 属に分類が変更されました。幅広い宿主範囲を持ち、ナス科やショウガ、バナナなど、200種以上の植物に感染することが知られています。

感染メカニズム

青枯病菌は、植物の根に傷がついた部分から侵入し、維管束内で増殖を始めます。この際、大量の細胞外多糖を生成することで、維管束の通水機能を阻害し、植物を枯れさせてしまいます。青枯病菌は乾燥に弱く、酸やアルカリによって死滅しやすいですが、水分を含む環境では数年もの間生存することが可能で、地下から再び地上部に上昇し青枯病を引き起こすことがあるため、防除が難しい病害とされています。

青枯病は特に25℃以上で活発になり、気温が下がると一時的に植物が回復することもあります。また、青枯病菌を10℃以下で保存すると、菌が死滅する可能性があるため、培養したシャーレは15℃での保存が推奨されます。

分離と培養

青枯病菌を培養する際にはCPG培地や、視認性を高めるためにテトラゾリウムレッドを加えた培地を使用します。これにより、青枯病菌は細胞外多糖を生成し、流動性の高い特有のコロニーを形成します。特に、テトラゾリウムレッドを加えたTTC培地上でのコロニーは、渦巻き状に赤く発色する特徴を持っています。この赤色は病原性の指標ともなり、発色が濃いものは病原性が高いものとされています。

青枯病菌を選択的に分離するには、原・小野選択培地が用いられますが、この培地では特定の菌密度以上（10の4乗 cfu/g）でないと検出が難しい場合があります。そのため、菌密度が低い場合は増菌法を用いることで効率的に青枯病菌を検出できます。

保存条件と対策

青枯病菌の保存には水による保存が適しています。室温で保存する際には、15〜32℃の範囲が望ましく、低温に長時間さらされると培養に失敗することが多いため注意が必要です。この細菌は容易に変異し、病原性を失うため、定期的に高病原性の株を確認することが推奨されています。また、土壌中からの持ち込みを防ぐために、農作業に使用する靴や機具の清潔を保つことも重要です。

江戸時代の農書には、青枯病に対して塩水や海水が有効であると記載されていますが、現代の研究でも3.5%の食塩水では青枯病菌が検出されなくなることが確認されています。しかし、トマトなどの作物が育つためには塩分濃度が0.14%程度であるため、海水を利用する方法は現実的ではないと考えられます。

青枯病菌は病原性遺伝子群をクオラムセンシングの仕組みで制御しており、その制御に必要なクオルモンとして3-OH PAMEが使用されます。この3-OH PAMEを分解する酵素を供給すると、青枯病菌は細胞外多糖を生成できなくなることが知られています。

このように青枯病菌は厄介な病原菌ですが、正しい知識と対策を持つことが、農作物を守るためには重要です。

もう一度検索