青柳まちこ

青柳まちこ：文化人類学のパイオニア

青柳まちこ氏（1930年-）は、日本の文化人類学界を代表する碩学の一人です。立教大学名誉教授として、長年にわたり教育・研究活動に尽力し、その業績は国内外で高く評価されています。本稿では、青柳氏の生涯と研究内容について詳細に見ていきましょう。

生涯とキャリア

神奈川県横浜市で生まれた青柳氏は、東京女子大学文学部社会科学科を卒業後、東京都立大学大学院博士課程に進学。1964年には中退するものの、1984年に「モデクゲイ―パラオ新宗教の研究」で文学博士号を取得しました。その間、ハワイ大学やオークランド大学に留学するなど、国際的な視野を養ってきました。

その後、清泉女子大学助教授、立教大学助教授を経て、立教大学文学部教授に就任。1997年に定年退職後は名誉教授となり、茨城キリスト教大学教授として教鞭を執りました。専門分野はオセアニア地域であり、特にトンガやパラオといった島嶼部の文化・社会を深く研究することで知られています。ご主人は、同じく文化人類学者である青柳清孝氏です。

研究内容と業績

青柳氏の研究は、オセアニア地域における文化・社会構造、宗教、ジェンダー、そして開発問題など多岐に渡ります。特に、フィールドワークに基づいた詳細な研究は、高い信頼性と独自性を持ち、多くの研究者に影響を与えてきました。

その研究成果は、数多くの著書や論文に結実しています。代表的な著書として、『秘境トンガ王国』『「遊び」の文化人類学』『モデクゲイ　ミクロネシア・パラオの新宗教』『子育ての人類学』『トンガの文化と社会』などが挙げられます。これらの著作は、一般読者にも分かりやすく書かれており、文化人類学への理解を深める上で非常に役立ちます。また、『国勢調査から考える人種・民族・国籍 オバマはなぜ「黒人」大統領と呼ばれるのか』など、現代社会の諸問題を文化人類学の視点から考察した著書も発表しています。

さらに、青柳氏は多くの編著や翻訳にも携わってきました。編著としては、『中学・高校教育と文化人類学』『「エスニック」とは何か エスニシティ基本論文選』などがあり、翻訳では、アルフレッド・ラドクリフ＝ブラウンの『未開社会における構造と機能』など、文化人類学の古典的な著作を日本語に紹介する役割も果たしています。

青柳真智子奨学金

青柳氏から立教大学に寄贈された奨学基金を基に、「青柳真智子奨学金」が設立されました。この奨学金は、人文地理学および文化人類学の分野で、主として海外調査を行う学生を対象としており、次世代の研究者を育成・支援することを目的としています。

まとめ

青柳まちこ氏は、長年にわたるフィールドワークと緻密な研究によって、オセアニア地域の文化・社会に関する深い知見を蓄積し、日本の文化人類学の発展に多大な貢献を果たしました。その業績は、多くの著書や論文、そして育成した多くの研究者たちを通して、今後も長く人々に影響を与え続けることでしょう。その学問への情熱と、後進育成への強い意志は、今後の研究者たちにとって、大きな指針となるでしょう。

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