青柳ヶ浜駅

青柳ヶ浜駅：琵琶湖畔の夏の思い出

青柳ヶ浜駅は、かつて滋賀県大津市荒川にあった江若鉄道の駅です。現在では廃駅となっていますが、琵琶湖にほど近い立地と、夏の海水浴シーズンのみ営業していたという独特の形態から、多くの人の記憶に残る存在でした。

開業と役割

1949年7月1日、江若鉄道の近江木戸駅と比良駅間に開業しました。駅開設の目的は、近隣の青柳浜水泳場へのアクセス向上です。当時、江若鉄道沿線には複数の水泳場があり、夏季には多くの海水浴客が訪れていました。青柳ヶ浜駅は、こうした水泳客輸送を円滑に行うための重要な役割を担っていました。駅の存在は、江若鉄道が夏季の観光客輸送に注力していたことを示す好例と言えるでしょう。簡素なつくりながら、海水浴客にとってなくてはならない存在だったのです。

駅の構造と周辺環境

青柳ヶ浜駅は、旅客の乗降を目的としたシンプルな構造でした。ホームは線路の片側に1面のみ。コンクリート製のホームに枕木を継ぎ足して延長した、簡素なつくりだったようです。駅舎は水色の小さな小屋で、そこで駅業務が行われていました。営業期間は夏季のみで、それ以外の季節は無人駅となっていたと推測されます。

駅の周辺は、大谷川が流れる地域でした。江若鉄道廃線後に敷設された湖西線は、一部区間で江若鉄道の線路跡を利用していますが、青柳ヶ浜駅付近では線路の位置がずれており、現在でも旧江若鉄道の路盤の一部を確認できる場所があります。しかし、駅そのものの痕跡は残されていません。

廃線とその後

江若鉄道は1969年10月31日に営業を終了し、青柳ヶ浜駅も翌11月1日に廃駅となりました。その後、駅舎は解体され、痕跡はほとんど残っていません。しかし、多くの写真や文献資料によって、その存在と役割は記録されています。これらの資料は、かつてこの場所に存在した、夏の賑わい、そして人々の思い出を伝える貴重な証となっています。

隣の駅

青柳ヶ浜駅に隣接する駅は、近江木戸駅と比良駅でした。近江木戸駅との間には大谷川トンネルがあり、このトンネルも江若鉄道の歴史を語る上で重要な要素の一つです。

資料

青柳ヶ浜駅に関する情報は、いくつかの書籍や論文に散見されます。例えば、『日本鉄道旅行地図帳』や『江若鉄道の思い出 ありし日の沿線風景』といった書籍には、当時の写真や詳細な記述があり、駅の姿を詳細に知ることができるでしょう。また、『鉄道ピクトリアル』などの雑誌にも、江若鉄道に関する記事が掲載されています。これらの資料を総合的に参照することで、より深く青柳ヶ浜駅の歴史と役割を理解することができます。大津市歴史博物館が所蔵する古写真にも、青柳ヶ浜駅の様子が記録されている可能性があります。これらの資料から、往時の賑わい、そして人々の生活と深く関わり合った駅の姿を垣間見ることができます。

まとめ

青柳ヶ浜駅は、短いながらも濃密な歴史を持つ、夏の思い出が詰まった駅でした。現在ではその姿を見ることはできませんが、残された資料や記憶を通して、その存在を偲び、地域の変遷を辿ることができます。 駅はなくなりましたが、琵琶湖の夏の風景の中に、青柳ヶ浜駅があったという記憶は、これからも多くの人々の心に刻まれ続けることでしょう。

もう一度検索