近江木戸駅

近江木戸駅：琵琶湖畔の賑わいし消えた駅舎

近江木戸駅は、かつて滋賀県滋賀郡志賀町大字木戸（現・大津市木戸）に存在した、江若鉄道の駅です。通称「木戸駅」とも呼ばれていました。1926年（大正15年）4月、江若鉄道の和邇駅から延伸開業した際に誕生しました。同年8月には雄松駅まで路線が延伸され、ますます重要な駅となりました。

特に戦後、1949年（昭和24年）の青柳ヶ浜駅開業までは、琵琶湖の青柳浜水泳場と松の浦水泳場の最寄り駅として、夏季には多くの行楽客で賑わいをみせていました。水泳を楽しむ人々や観光客で活気に満ちた駅だった様子が想像できます。しかし、1969年（昭和44年）10月31日、江若鉄道は営業を終了。近江木戸駅も翌11月1日に廃止という運命を辿ることとなりました。

駅の構造と役割

近江木戸駅は旅客と貨物の両方を扱う一般駅で、列車交換が可能な交換駅でした。2本の線路を挟んで向かい合わせに配置された相対式ホーム2面を有し、さらに貨物側線も備えていました。ホームの脇には茶色の給水塔が建っており、蒸気機関車の給水に使用されていたことから、当時の鉄道風景が偲ばれます。多くの列車が行き交い、活気ある駅だったことがうかがえます。

開業から廃止までの歩み

1926年（大正15年）4月11日、和邇駅から近江木戸駅までの延伸開業によって誕生しました。わずか4ヶ月後の8月11日には、近江木戸駅から雄松駅までの区間が開業。その後、長きに渡り地域住民や観光客の足として利用されてきました。しかし、時代の流れとともに利用客が減少。1969年（昭和44年）11月1日、近江木戸駅は廃止となりました。短いながらも、地域社会に貢献した歴史を持つ駅でした。

周辺環境と現在の様子

駅のあった場所は、江若鉄道廃線後に開業した湖西線志賀駅とほぼ一致しています。現在では、その面影はほとんど残っておらず、湖西線の線路が駅跡を走り抜けています。しかし、近江木戸駅と蓬萊駅の間には木戸川、近江木戸駅と青柳ヶ浜駅の間には大谷川という天井川が流れており、江若鉄道はこれら2つの河川をトンネルで貫通させていました。この2つのトンネルは、江若鉄道線内にある唯一のトンネルだったとされています。

近江木戸駅とその周辺：歴史とロマンの残像

近江木戸駅は、かつて琵琶湖畔に栄えたローカル線の駅として、多くの人の記憶に刻まれています。廃線後、駅舎は姿を消しましたが、その歴史とロマンは、写真や文献を通して今に伝えられています。湖西線を利用する際には、かつて賑わった近江木戸駅があった場所を想像してみるのも良いかもしれません。周辺の地形や河川の様子から、当時の鉄道運行の様子を想像してみるのも興味深いでしょう。近江木戸駅は、地域の変遷とともに消えた、一つの歴史の証です。

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