青柳一郎 (国土交通官僚)

青柳 一郎（あおやぎ いちろう）氏は、1962年（昭和37年）8月2日に神奈川県で生まれた日本の建設・国土交通官僚です。幼少期から中学時代までを横浜市で過ごし、東京学芸大学附属高等学校を経て、1986年（昭和61年）に東京大学法学部を卒業しました。大学卒業と同じ年に、当時の建設省の門をたたきました。

建設省入省後は、行政官として幅広い分野で経験を積んでいきます。国土交通省では都市・地域整備局まちづくり推進課都市開発融資推進室長を務め、地域づくりに関わる金融支援の推進に携わりました。地方組織である中部地方整備局では総務部長として組織運営を担い、中央省庁では内閣府政策統括官（防災担当）付参事官（総括担当）として防災行政の企画・調整に関わりました。また、国土交通省大臣官房総務課長として省内の要務を取り仕切り、さらに内閣府地方創生推進事務局審議官や内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長として、国を挙げて推進された地方創生政策の立案と実行に深く関与しました。

キャリアの後期には、さらに重要なポストに就きました。2018年（平成30年）7月31日には、国土交通省大臣官房政策立案総括審議官に就任し、省全体の政策方針の策定・調整を統括する立場となりました。2019年（令和元年）7月9日からは、内閣府政策統括官（防災担当）として、国の防災行政における実務を担い、災害に強い国づくりの推進に尽力しました。

そして、2021年（令和3年）7月1日、国土交通省国土政策局長に就任します。このポストにおいて、青柳氏は特に重要な二つの課題に取り組みました。一つは新たな国土形成計画の策定、もう一つは豪雪法や離島振興法の延長改正に向けた、地理的・自然的条件から不利を抱える地域の振興推進です。

国土政策局長として、青柳氏が特に力を入れたのが、次期国土形成計画の策定でした。2021年6月に取りまとめられた「国土の長期展望」で示された将来像を踏まえ、計画に「ローカル・グローバル・ネットワーク」という新しい視点を取り入れ、デジタル技術を活用した新しい国土づくりを進める方針を打ち出しました。計画策定の方向性について、青柳氏は「大衆小説を表彰する直木賞」にたとえ、学術的な知見や客観的なデータに基づく現状分析と将来設計、そして課題の明確化が不可欠であると強調しました。さらに、計画の内容は「中高生でも理解できる」ほど分かりやすく、自治体や民間事業者といった多様な関係者が「何度も見返したくなる」実用的なものであることを目指す、と政策の展開方法について分かりやすさを重視する姿勢を示しました。

この計画策定を具体的に進めるため、2021年7月2日には国土審議会に計画部会が設けられ、同年9月28日に最初の会合が開催されました。この部会では、新しい国土づくりの方向性として、多岐にわたる政策が議論されました。例えば、

テレワークの推進や行政手続き・業務のデジタル化
都市の機能を集約し、持続的に提供するコンパクト化
ネットワークを活用した効率的な地域連携
対面と遠隔を組み合わせた医療や教育サービスの提供
生活、移動、交通が seamlessly 連携する環境整備
地域におけるイノベーションの創出と必要な人材の確保
地域発のグローバルに通用する産業育成
情報通信ネットワークの強化
地域と世界の結びつき（ローカル・グローバル）の充実
環境問題、災害リスク、インフラ老朽化への対応
人口減少に対応した国土の適切な管理
防災・減災、国土強靱化の推進
* 再生可能エネルギーなどを地域で生産・消費する「エネルギーの地産地消」

などが挙げられています。青柳氏は、これらの目標達成に向け、分かりやすい具体的な指標を設定し、その実現への道筋を明確に示すことを目指す姿勢を鮮明にしました。2022年（令和4年）6月28日をもって、国土交通省国土政策局長を辞職しています。

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