青楓美術館

青楓美術館：山梨を代表する文化施設の歩みと未来

山梨県笛吹市にある青楓美術館は、明治から昭和時代にかけて活躍した画家、津田青楓の作品を専門に扱う美術館です。1974年10月、津田青楓と親交の深かった歴史研究家、小池唯則氏によって開館されました。小池氏の私財を投じて設立された美術館は、数年後に小池氏の逝去後、1984年に氏の娘から一宮町（現・笛吹市）に寄贈され、現在に至ります。

幅広い作品群と展示

青楓美術館は、洋画、日本画、デッサン、書と多様な作風を持つ津田青楓の作品約700点（2022年現在）を収蔵しています。これらの作品は、津田青楓の遺族やコレクターの方々からの寄贈によるものです。美術館では、春と秋の年2回、展示替えを行い、来館者に新鮮な作品鑑賞体験を提供しています。

1階と2階に展示室を持つ美術館では、青楓の代表作である『疾風怒涛』（1932年）が常設展示されています。その他にも、彫刻、工芸品、書簡、画具など、津田青楓の生涯と作品世界を深く理解できる資料が数多く公開されています。

山梨県最古の美術館としての歴史

青楓美術館は、山梨県内では最も歴史の古い美術館の一つに数えられます。山梨県で最も古い美術館として知られる嘯月美術館は、青楓美術館と同じ1974年10月に開館しましたが、現在営業しているかは確認できません。そのため、現在も継続して運営されている美術館としては、青楓美術館が山梨県最古の美術館と言えるでしょう。

存続の危機と地域住民の取り組み

美術館の存続は、常に課題となっています。2009年、笛吹市教育委員会は入館者数の減少を理由に、2011年3月での閉館を決定しました。しかし、この決定に疑問を持った関係者らの尽力により、入館者増加に向けた様々な取り組みが行われ、2010年11月、閉館方針は撤回され、美術館は存続することとなりました。

しかし、新たな危機が訪れます。2022年9月、笛吹市教育委員会は、建物の老朽化、バリアフリー化の遅れ、周辺道路事情などを理由に、2025年度までに春日居郷土館・小川正子記念館への移転計画を発表しました。

移転計画に先立ち、春日居郷土館では青楓美術館所蔵の作品による特別展が開催されました。しかし、同館は美術品保管に適した環境が整っておらず、貸し出された洋画3点は返却時に破損が確認される事態となりました。この出来事は、移転計画に対する懸念をさらに深める結果となりました。

これを受け、2023年6月、「青楓美術館の現地存続を求める会」が結成され、署名活動が行われました。そして2024年3月、6522名分の署名が笛吹市長に提出され、移転計画は一時凍結、再検討されることとなりました。

アクセスと周辺情報

青楓美術館へのアクセスは、中央本線甲府駅または勝沼ぶどう郷駅から路線バスを利用し、「一宮北小学校前」バス停下車、徒歩約7分です。お車の場合は、中央自動車道勝沼ICから約15分です。周辺には、ぶどうの丘、宮光園、メルシャンワイン資料館など、観光スポットも点在しています。

未来への展望

青楓美術館の未来は、いまだ不透明なままです。しかし、地域住民の強い思いと、美術館が持つ歴史的、文化的価値を考えると、その存続を願う声は多く、今後の展開が注目されます。

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