青葉女学院

青葉女学院（あおばじょがくいん）は、明治時代から昭和初期にかけて現在の宮城県仙台市に存在した教育機関です。日本聖公会によって運営され、特に婦人伝道師、幼稚園の保姆（現在の幼稚園教諭）、そして児童教育者の育成を使命としていました。1898年（明治31年）9月に設立され、1941年（昭和16年）にその歴史に幕を閉じました。当時、東北地方で唯一の保姆養成機関として、キリスト教主義の幼稚園はもとより、一般的な幼稚園へも多くの有能な人材を輩出し、この地域の幼児教育振興に大きく貢献しました。

歴史的背景：東北伝道開拓の中で

青葉女学院の設立は、日本聖公会による東北地方への伝道開拓という大きな流れの中で位置づけられます。日本聖公会が組織として成立して間もない1891年（明治24年）以降、北東京地方部監督であったジョン・マキムの指導のもと、東北各地へ宣教師や伝道師が派遣され始めました。福島、青森、そして1893年（明治26年）には仙台へと伝道師が送られ、活発な宣教活動が展開されます。伝道集会だけでなく、裁縫学校、幼稚園、日曜学校といった多様な活動を通じて、地域社会との接点を持ち、教会形成が進められていきました。この時期の代表的な人物には、東北各地の教会で主任や管理長老を務めたメードレー長老などがいます。

学院の創設と保姆養成

このような伝道開拓が進む中、ジョン・マキムは婦人伝道師の必要性を感じ、1898年（明治31年）9月に仙台に婦人伝道師を養成するための女学校を創設しました。これが後の青葉女学院となります。そして1913年（大正2年）には「青葉女学院」と正式に改称され、新たに保姆養成部が併設されました。

保姆養成部設立の目的は明確で、「幼稚園保姆や将来にわたり児童を指導する者を育成すること」、そして「幼稚園伝道事業のために特別な訓練を行うこと」とされていました。教育課程は非常に実践的かつ多岐にわたり、児童心理学や幼稚園原理といった専門分野に加え、聖書、日曜学校教授法、英語、国文学、説話、音楽、手工、教材教育、衛生、図画、体操、博物、教育史などが含まれていました。修業期間は2年間で、特に2年次には午前中に関連する幼稚園で実習を行い、午後に学院で授業を受けるという形で、理論と実践を融合させた教育が行われていました。

当時の青葉幼稚園は、聖公会が設立に関わった米国コロンビア大学で幼児教育を専門に学んだ教授陣によって運営されており、フレーベルのキリスト教主義教育を基盤としながらも、自由作業、自由遊戯、自由会話といった当時新しいとされた保育手法も積極的に取り入れて実践されていました。このような恵まれた環境での学びや実習は、保姆を目指す学生たちにとって貴重な経験となりました。

青葉女学院は、毎年10名程度の保姆を卒業させ、東北地方における唯一の保姆養成機関として、キリスト教系幼稚園だけでなく、一般の幼稚園にも卒業生を送り出し、広く幼児教育の質の向上に貢献しました。例えば、後に帯広の双葉幼稚園で園長を務めた臼田梅も、1918年（大正7年）から1年間、ここで保姆資格取得のために学んでいます。双葉幼稚園は1911年（明治44年）に開園した古い歴史を持つ幼稚園で、新園舎建築を控えて専門知識を持つ保姆を求めており、青葉女学院での学びがその後の発展に繋がりました（ちなみに、旧双葉幼稚園舎は現在も現存し、国の重要文化財に指定されています）。

廃校へ

しかし、時代は太平洋戦争へと向かい、日米関係は悪化の一途をたどります。1940年（昭和15年）には日本聖公会が米国聖公会からの経済的自立を決定。さらに1941年（昭和16年）7月には、本国政府からの指示により、日本に滞在していた米英人の教員たちが相次いで帰国せざるを得なくなりました。これにより教育体制の維持が困難となり、同年、青葉女学院は惜しまれつつ廃校となりました。

戦後の復興と現在の姿

第二次世界大戦後、青葉女学院の再興に向けた動きが始まります。1956年（昭和31年）、日本聖公会東北教区主教の中村信蔵が、司教座聖堂である仙台基督教会の建設に伴い仙台に拠点を移したことを機に、青葉女学院の復興と変容貌修女会の開設を通じて、仙台は教区の中心としての役割を強めていきます。中村主教は青葉女学院再建の意向を持って、オハイオ州グレンデールにある変容貌修女会にシスターの派遣を要請しました。

同年、シスター・マリヤ・マーガレットとシスター・アースラが仙台に着任し、変容貌修女会の仙台支部が開設されます。そして、この活動の一環として、同年9月には学校法人聖公会青葉学園による「聖クリストファ幼稚園」が開園しました。シスター・マリヤ・マーガレットは初代園長として、15年間にわたり幼児へのキリスト教教育と育成に情熱を注ぎました。聖クリストファ幼稚園は、現在も日本聖公会仙台聖フランシス教会に併設され、青葉女学院の志を引き継ぎ、幼児教育の場として地域に貢献しています。

なお、学校法人北杜学園が運営している仙台青葉学院短期大学や、2024年4月に開学した仙台青葉学院大学は、この青葉女学院またはその流れを汲む学校法人聖公会青葉学園とは設立経緯や運営母体が異なり、関係はありません。

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