青面金剛

青面金剛について

青面金剛（しょうめんこんごう）は、日本仏教における信仰の対象であり、仏教の尊格の一つです。青面金剛明王とも呼ばれ、夜叉神としての性質を持ちます。しかし、インド由来の仏教尊格ではなく、独自の歴史的背景を持っています。

起源と誤伝

青面金剛の起源は、インド密教におけるマハーカーラの姿が、唐の時代に中国へ伝わった際に誤解されたことに始まります。マハーカーラは本来、ドクロの首飾りや蛇を巻き付けた恐ろしい姿で描かれますが、これが病気を流行させる悪鬼と誤って解釈され、「青面金剛」と名付けられました。このため、本来無関係なマハーカーラと青面金剛が同一視されるようになりました。

庚申信仰との結びつき

青面金剛は、中国の道教思想に由来し、日本の民間信仰である庚申信仰の中で独自に発展した尊格です。庚申信仰では、人間の体内には三尸（さんし）という3種類の悪い虫が棲んでおり、その虫が人間の悪事を天帝に報告するとされています。このため、三尸が活動するとされる庚申の日（60日に一度）の夜は、眠らずに過ごす「庚申待」の風習がありました。青面金剛は、この三尸を押さえる神として信仰され、庚申講の本尊として祀られるようになりました。庚申待は平安貴族の間で始まり、近世には民間にも広まり、近隣の人々が集まって徹夜で酒宴を行う風習となりました。

像容の特徴

青面金剛の像容は、一般的に忿怒相で描かれます。足元には邪鬼を踏みつけ、六臂（二臂、四臂、八臂の場合もある）で法輪、弓、矢、剣、錫杖、ショケラ（人間）を持っています。頭髪の間には蛇がとぐろを巻いていたり、手や足に巻き付いていることもあります。また、ドクロを首や胸にかけた像も存在します。彩色される際には、その名の通り青い肌に塗られます。この青色は、釈迦の前世に関係するとも言われています。これらの姿は、密教の明王像、特に軍荼利明王に通じるものがあります。

庚申塔と青面金剛

日本では各地に石造の庚申塔が多数残されており、そこには「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿像と共に青面金剛像が表されていることが多いです。木造の古例としては、奈良・東大寺の木造青面金剛立像（重要文化財）が有名です。

青面金剛を祀る庚申塔の例

新堀庚申塔(埼玉県川口市新郷地区)
峯辰井川庚申塔(埼玉県川口市峯地区)
東本郷庚申塔(埼玉県川口市東本郷地区)
遊馬庚申塔(埼玉県草加市遊馬町)
正源寺庚申塔(埼玉県川口市新郷地区)
庚申塔(埼玉県草加市苗塚町)
苗塚庚申堂と庚申塔庚申塔(埼玉県草加市苗塚町)
庚申塔(岐阜県加茂郡八百津町)

真言

青面金剛の真言は、「おん・でいば・やきしゃ・ばんだ・ばんだ・かかかか・そわか」と唱えられます。

参考資料

大畠 洋一「ショケラを下げた夜叉-江戸青面金剛の起源を探る」『日本の石仏』日本石仏協会(93),2000年 pp46-56.

関連事項

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