静岡市歌

静岡市歌：時代を彩った二つの旋律

静岡市歌とは、かつて静岡県静岡市に存在した市歌です。時代背景を反映した2つの楽曲があり、それぞれ異なる経緯で制定されました。

初代市歌（1905年制定）

初代の静岡市歌は、1905年（明治38年）に誕生しました。作詞は当時の静岡師範学校附属小学校主事であった田辺友三郎氏、作曲は東京音楽学校教諭の田村虎蔵氏が手掛けました。この歌は、日露戦争の凱旋歌として作られた背景を持ち、静岡県が附属小学校唱歌として採用。同年3月3日の県告示第69号をもって正式に静岡市歌となりました。

歌詞は、静岡大学教育学部附属静岡小学校創立百周年記念誌『ふぞくひゃくねん』に掲載されています。

2代目市歌（1937年制定）

2代目の静岡市歌は、1937年（昭和12年）に制定されました。当時の尾崎元次郎市長が「市民の愛郷精神涵養」を掲げ、新たな市歌の制定を提唱したことがきっかけです。市民からの歌詞一般公募が行われ、828編もの応募作品の中から、城内西小学校教員であった大川浩氏の作品が選ばれました。

作曲は、東京音楽学校講師の信時潔氏に依頼され、1937年10月21日に制定、翌1938年1月1日に完成版が発表されました。この2代目市歌は、長らく市民に親しまれ、市内の小学校では社会科の教材として2002年度まで使用されていた副読本『進みゆく静岡市』にも、その一節が引用されていました。

2代目静岡市歌の旋律は、2015年12月31日に著作権の保護期間を満了しています。

静岡市・清水市の合併と市歌の廃止

2003年（平成15年）、静岡市は清水市と新設合併し、新たな「静岡市」としてスタートを切りました。合併協議会では、両市が完全に対等な立場で合併することを重視し、旧静岡市の市章・市旗、そして「静岡市歌」は廃止されることとなりました。

しかし、2代目市歌は完全に忘れ去られたわけではありません。静岡市民文化会館の中ホール舞台の緞帳には、芹沢銈介氏が制作した2代目市歌の歌詞をデザインした作品が使用されており、同会館の公演開始告知時には、2代目市歌がアレンジされたメロディーのチャイムが流れています。

現在、静岡市の市歌は2005年（平成17年）に制定された「わたしの街 静岡」です。

その他の関連楽曲

旧静岡市には、イメージソングとして「しあわせしずおか」がありました。1989年（平成元年）の静岡市制100周年を記念して歌詞・曲が公募され、グランプリ作品に風戸慎介氏が曲を付け、1986年（昭和61年）10月30日に発表されました。歌は根本美鶴代（MIE）氏が担当し、カセットテープで限定販売されました。

B面曲は「ドラマティック・サンシャイン」で、同じくMIE氏が歌っています。

まとめ

静岡市歌は、時代の変遷とともにその役割を終えましたが、市民の心にはそれぞれの時代を彩った旋律が刻まれています。初代市歌は日露戦争の記憶を、2代目市歌は市民の愛郷心を象徴するものとして、その存在意義を語りかけていると言えるでしょう。

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