静岡観光バス横転事故

静岡観光バス横転事故について

2022年10月13日午前11時50分頃、静岡県駿東郡小山町の県道「ふじあざみライン」で、クラブツーリズム主催の日帰りバスツアーの大型観光バスが横転する痛ましい事故が発生しました。

この事故により、70代の女性乗客1名が亡くなられたほか、35名もの方が重軽傷を負うという大変な事態となりました。ツアーには、埼玉県西部から富士山五合目へ向かうために、34名の乗客と運転手、添乗員の計36名が乗車していました。

事故の概要

事故を起こしたバスの運転手は26歳の男性で、過失運転致傷の現行犯で逮捕されました。当初、運転手は「ブレーキが利かなくなった」と供述していましたが、警察の捜査では、スリップ痕などから、ブレーキが全く利いていなかったわけではないという見解が出ています。

この事故を受け、国土交通省は道路運送法に基づき、運行会社である美杉観光バス（埼玉県飯能市）に対して特別監査を実施しました。また、事業用自動車事故調査委員会（国交省の外部機関）も事故原因の調査を開始しました。

この事故は、貸切バス事業者安全性評価認定制度で三つ星を獲得した事業者が起こした初の死亡事故であり、安全性に対する信頼を大きく揺るがす出来事となりました。

事故原因の究明

警察と自動車メーカーの合同調査によると、事故当時、バスのギアがニュートラルに入っており、エンジンブレーキが作動しない状態だった可能性が指摘されました。大型バスに採用されているフィンガーシフト式変速機は、安全のために一定速度を超えている状態では一段ずつしかシフトダウンできない構造になっています。そのため、運転手がレバーを急に低速の位置に入れても、実際にはギアが切り替わらず、ニュートラルのまま警告灯と警告音で知らせる仕組みになっています。このような状況から、フットブレーキの過多使用によるフェード現象が発生し、ブレーキが利かなくなった可能性が高いとされています。

刑事裁判

2023年2月、静岡地方検察庁沼津支部は、運転手がフットブレーキの使用を控えながら走行する義務を怠ったとして、自動車運転処罰法違反（過失致死傷）罪で在宅起訴しました。同年9月26日、静岡地方裁判所沼津支部は、元運転手に対し禁錮2年6月の実刑判決を言い渡しました。

裁判では、野沢晃一裁判官が「多くの命を預かる立場でありながら、注意事項を守らずに事故を起こした運転手の過失は重い」と指摘しました。また、「被害者の数が多く、腕や指の切断など重い障害を負った方が複数いるため、結果は非常に重大である」と述べ、実刑判決が相当であると判断されました。

関連事項

この事故に関連して、以下の事故も参照できます。

名古屋高速バス横転炎上事故: 同年に発生したバス事故です。
軽井沢スキーバス転落事故: フィンガーシフト式変速機でシフトダウンが効かなくなった可能性のある事故です。

これらの事故は、バスの安全運行における問題点を浮き彫りにし、再発防止に向けた対策の必要性を強く訴えています。

この事故で犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた方々の一日も早い回復をお祈りいたします。

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