非形式論理学

非形式論理学とは

非形式論理学（Informal logic）とは、形式論理学が主に記号を使った人工的な理論体系を扱うのに対して、自然言語を利用した議論を重点的に分析する学問分野です。1970年代初頭に北アメリカで、大学生向けの論理学入門の新たなスタイルとして導入され、以来、批判的思考や議論学と密接に関連付けられています。この学問の特徴は、日常におけるコミュニケーションや討論を対象に、その論証や思考過程を評価・批判・構築するための原則や手続きを確立することにあります。

定義と起源

非形式論理学の具体的な定義については、専門家の間で広く合意は得られていないものの、Ralph H. JohnsonとJ. Anthony Blairによる定義が広く受け入れられています。彼らはこの学問を「日常会話における議論や論証の分析、解釈、評価、批評、構築のための非形式的な基準の開発を目的とする」分野として位置づけています。これは、議論が日常会話の中でどのように展開され、また評価されるかに焦点を当てたものです。非形式論理学が興味を持つのは、形式論理学では議論されない実際の生活や議論の場面です。

形式論理学との違い

形式論理学では、例えば「全ての人間は死ぬ」という前提から「ソクラテスは死ぬ」という結論を導くように、明確に定義された前提と結論が常に存在し、真理値も一意に定義されます。しかし、日常生活の中での議論では、政治的選択や倫理的判断など、複雑な要素が絡むため、必ずしも明確な結論に達するわけではありません。非形式論理学では、論証は理性的な説得や対話と見なされ、議論のプロセスそのものが扱われます。

常見の例

例えば、Martinが「ウィンザーは汚くない」と述べ、自身の主張を補強する理由を話した場合、この主張は彼の論証の強さには触れていないものの、日常的な議論の展開としては一般的です。彼の論証には未検証の仮定が含まれている場合も多く、それが日常の議論においても広く見られる現象であることを示しています。この例は、非形式論理学が研究する議論の雛形であり、日常における議論の複雑さを反映しています。

他の領域との関連

非形式論理学は、批判的思考とも深く関連しています。1980年代から、教育の分野でも批判的思考が重要視されるようになりました。「批判的思考」は主に思考の方法論を指しますが、非形式論理学はその活動に位置づけられています。批判的思考は、議論の強さや弱さを評価する行為であるため、非形式論理学がその手法を提供するものとされることが多いです。また、議論学は、社会的な議論のプロセスを理論的に研究する学問領域で、非形式論理学はそこで扱われる論証の基盤の一つとなっています。

結論

このように、非形式論理学は形式的な議論では扱えない日常的な議論や思考過程を分析し、その中に潜む論理的構造を明らかにすることを目指しています。また、批判的思考や議論学との間に密接に関連することにより、実生活の中での理性的な討論や判断の形成に寄与しています。今後もこの学問の発展が期待されます。

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