非御家人

非御家人（ひごけにん）について

非御家人は、鎌倉時代において幕府と御家人関係、すなわち御恩と奉公の契約を結んでいない武士たちを指します。しかし、非御家人の全てが御家人以外の武士であるわけではありません。具体的には、一定の階層に属する侍であり、一般的な身分ではない凡下（ぼんげ）とは明確に区別されます。

鎌倉時代後期に成立した著作『沙汰未練書』には、「非御家人とは、侍でありながら、実際に役務を果たしていない者を指す」と記されています。このように、彼らには武士としての職務があるものの、幕府との関係が築かれていないため、特有の立場があります。具体的には、公家領や寺社領における荘官として働く者たちや、御家人の庶流に属する者たちも非御家人に該当しました。

非御家人であったため、彼らには御家人としての義務は課されませんが、逆に訴訟や幕府の政策に関しては御家人に比べて不利な扱いを受ける場面が多々ありました。つまり、非御家人は一定の自由を持つものの、幕府からの支援や保護を受けられず、法的な権利が制約されることが多くあります。例えば、御家人は自らの領地に基づく経済的基盤があり、それを守るための役務が求められましたが、非御家人はこのような保障が無いため、経済的には弱い立場に置かれがちでした。

幕府の方針としては、御家人領から非御家人への流出を防ぐことが重視されました。早期に新恩所領、つまり幕府に従い取得した土地の売買が禁止され、仁治元年（1240年）には本領、すなわち幕府によって安堵された土地についても非御家人への売買が禁止されることとなりました。このような政策は、非御家人が御家人の経済基盤を損なわないようにする意図があったのです。

このような背景から、特に永仁5年（1297年）に発布された永仁の徳政令の影響が大きく、買得地は元の領主である御家人へ返還されることが求められ、不満が高まる結果を招きました。非御家人が自由に土地を扱えない状況下では、彼らの立場はますます厳しくなっていきました。

また、元寇以降の軍役制度の変化により、全国的な軍役の負担が御家人だけでは賄いきれず、異国警固番役や長門警固番役など、様々な役務が非御家人にも求められるようになりました。この結果、非御家人と御家人の区別は徐々に曖昧になっていきます。

以上のように、非御家人は一見すると自由な武士のように見えますが、実際には幕府との関係性が非常に重要であり、そのための義務や権利の不均衡が彼らの立場を複雑なものにしていました。武士としての誇りを持ちながらも、制度や政策によって制約を受ける彼らの存在は、鎌倉時代の武士階級全体の構造を理解する上で欠かせない要素であると言えるでしょう。

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