凡下

凡下（ぼんげ）

凡下とは、中世日本における民衆を指す言葉です。その語源は仏教にあり、初めは「世の愚かな人々」や「世の人」といった意味合いで使われていましたが、時を経るにつれ、一般社会においては官位を持たない人々、すなわち無位な人々を指すようになりました。特に、白丁（何らかの形で社会的地位を持たない人々）を包括して考えられました。

歴史的背景

武士階級が台頭するにつれて、武士の身分と官位には明確な関連がなくなりました。特に、武士の中にも官位を有する者と無位の者が混在していたため、身分を表す用語としての「凡下」がより希薄になり、特に無位の庶民、すなわち雑人と対について使われることが増えていきました。このように、凡下は下人身分をも含む広い範囲の人々を指していました。

鎌倉幕府の影響

鎌倉幕府の成立によって、社会の身分秩序が一新されました。幕府は、御家人と呼ばれる武士たちと、それに対比する形で、名主や農民、商人、職人、さらには下人といった人々をすべて「凡下」として総称しました。特に雑色以下の職員も含まれ、凡下に対するさまざまな制約が課せられました。

幕府は、凡下が御家人に昇格することや、御家人の権利を施行することを厳しく禁止しました。また、凡下の服装や行動に対する規制が強化され、違反した場合は拷問や身体刑を科すことが許可されていました。これに対し、御家人には基本的に財産刑が適用されていました。

身分秩序の崩壊

しかし、幕府と朝廷の間に存在する身分秩序の不一致や、経済状況の変化によって、鎌倉時代の後期には格差が生じる状況に至りました。経済的変動の中、御家人の没落が起き、凡下から出身の人々が台頭する事態が見られました。このことは、支配階層における凡下に対する統制を難しくしました。

一方で、凡下の中にはさまざまな職業が含まれ、彼らが社会において果たした役割は決して小さくありませんでした。この時代、階層社会の複雑さや変動は、後の日本社会の基盤に影響を与え続けました。凡下という概念は、中世日本の共同体や社会構造を理解する上で重要な要素となります。

参考文献

• - 橋本義彦「凡下」『日本史大事典 6』（平凡社 1994年）
• - 田中文英「凡下」『日本歴史大事典 3』（小学館 2001年）

関連項目

• - 甲乙人

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