非戦論

非戦論とは

非戦論とは、戦争や武力による威嚇、武力行使を否定し、戦争以外の手段や方法によって問題解決や目的達成を目指す思想、および社会運動を指します。

日本における非戦論の歴史

日本における非戦論は、19世紀末の明治時代に社会運動として登場しました。日露戦争前夜には、幸徳秋水や堺利彦らが社会主義の思想を背景に、新聞などを通して非戦を訴えました。しかし、欧米のような組織的な徴兵反対運動や兵役忌避者団体は組織されることはありませんでした。

第二次世界大戦後には、平和運動が社会の主流となりました。

内村鑑三と非戦論

キリスト教の信仰者である内村鑑三は、独自の非戦論を展開しました。それは、戦争政策への反対と、戦争に直面した際の無抵抗という二つの側面からなるものでした。内村は、あらゆる暴力と破壊に抵抗し、不義の戦争における兵役受容を自身の行動原理としていました。

内村は日露戦争に反対する言論活動を展開する一方で、徴兵拒否を相談に来た青年に対しては、「家族のためにも兵役に行くべきだ」と助言しています。内村の非戦論は、「キリストが他人の罪のために十字架についた」という教えに基づき、信者が戦場に赴くことを求めました。また、戦場でのキリスト教徒の死は、神に受け入れられる価値ある犠牲であると説きました。内村は、弟子たちに兵役を避けるべきではないと説き、戦死した弟子には「神は天であなたを待っている、あなたの死は無駄ではなかった」と送りました。

仏教と非戦論

真宗大谷派の僧侶である高木顕明は、自身の仏教信仰に基づき非戦論を主張しました。

文学者の非戦論

与謝野晶子や木下尚江ら文学者も、非戦をテーマにした作品を発表しました。与謝野晶子は日露戦争時に反戦歌「君死に給うことなかれ」を発表しましたが、太平洋戦争時には戦争を賛美する歌を作っています。戦後、坂口安吾は無抵抗主義に基づく独自の非戦論を唱えました。

21世紀初頭の非戦論

アメリカ同時多発テロ事件以降、非戦論を再評価する動きもみられます。

関連事項

正戦論
ハト派
平和主義
反戦運動
徴兵制
良心的兵役拒否

関連書籍

非戦　坂本龍一著
非戦論　富岡幸一郎著

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