東山事件

東山事件

東山事件は、1977年5月8日に新東京国際空港（現在の成田空港）建設に反対する人々、特に三里塚芝山連合空港反対同盟の支援者と機動隊が激しく衝突した際に、支援者の東山薫氏が機動隊の発射した催涙ガス弾が頭部に直撃し、2日後に死亡したとされる事件です。

事件の概要

事件は、空港公団が反対派の象徴である「岩山大鉄塔」を撤去したことから始まりました。これに反発した反対派は、大規模な抗議活動を計画しますが、県警は集会届が規定を満たしていないとして拒否。それでも反対派は集会を決行し、警察との間で激しい衝突へと発展しました。

事件当日までの経緯

5月6日: 空港公団が反対派の「岩山大鉄塔」を撤去
5月7日: 飛行検査開始、反対派が妨害
5月8日: 反対派が大規模抗議活動を計画、集会届は拒否
5月8日未明: 検問所へのゲリラ襲撃事件が発生

反対派は、集会場所を芝山町にある山武農協千代田事務所に設定。しかし、県警は会場が検問所に近すぎるとして、三里塚第2公園への変更を提案。連絡が伝わらず、反対派は予定通り芝山町に集結し、大規模な衝突が始まりました。

衝突の激化

集会当日、反対派は火炎瓶や投石で攻撃。機動隊は催涙ガス弾や放水で応戦しました。この衝突の中で、東山薫氏が機動隊の放った催涙ガス弾によって重傷を負い、その後亡くなりました。

反対派は火炎瓶や投石で攻撃
機動隊は催涙ガス弾や放水で応戦
東山薫氏が催涙ガス弾の直撃を受け死亡

東山薫氏の死

東山氏は、衝突での負傷者の応急処置を行うための「臨時野戦病院」への機動隊の進入を防ぐために、スクラムを組んでいた際に、機動隊が発射した催涙ガス弾が右後頭部を直撃し、意識不明の重体となりました。その後、搬送先の病院で脳死状態となり、2日後に死亡。死亡診断書では直接死因を「解放性脳損傷および脳挫傷」とされています。東山氏は、非戦闘員を表す赤十字マークを付けていましたが、頭部を保護するヘルメットは着用していませんでした。

両者の主張

東山氏の死を巡っては、遺族・反対派と警察側で意見が対立しました。

遺族・反対派の主張

機動隊が至近距離で水平にガス銃を発射し、殺意があった
ガス銃は本来上に向けて使用するものである
模擬弾が使用された可能性
東山氏は救護所防衛隊員であり、軽装で無防備だった

警察側の主張

過激派集団の違法行為に対する鎮圧活動だった
東山の負傷は反対派の投石による同士討ちである
水平撃ちだったとしても、当時の状況では正当な行為だった
東山は活動家であり、非戦闘員ではない
模擬弾は威嚇目的で使用、東山負傷時には使用していない

裁判

東山氏の両親は、日本国政府と千葉県を相手取り損害賠償を求める民事訴訟を起こしました。第一審では訴えが退けられましたが、控訴審で東山の死因は機動隊の発射したガス弾によるものと認められ、県に賠償が命じられました。最高裁でこの判決が確定しています。一方、反対同盟は、警察幹部を殺人罪などで刑事告訴しましたが、不起訴処分となりました。

民事訴訟

第一審：原告の訴えを退ける
控訴審：県に賠償を命令
最高裁：控訴審判決が確定

刑事告訴

警察幹部を殺人罪などで告訴するも不起訴処分

事件の背景

事件の背景には、長年にわたる成田空港建設を巡る反対運動と、それに対する警察の強硬な姿勢がありました。特に、「岩山鉄塔」の撤去は、反対派の怒りを買い、衝突の激化を招く要因となりました。

岩山鉄塔

反対派の象徴であった「岩山鉄塔」が撤去
反対派の闘争心が激化

警察

過去の事件から反対派への憎悪と恐怖が蔓延
反対派を「極左暴力集団」と認識

事件の影響

この事件は、三里塚闘争における反対派の犠牲者として、特に強調されることが多いです。事件後、警察は成田空港警備でのガス弾の積極的な使用を控えるようになりました。また、反対運動と警察との間の対立は、さらに深刻化しました。

反対派の警察に対する怒りが激化
警察はガス弾の使用を抑制
三里塚闘争における反対派の犠牲者として強調される

参考文献

東京新聞千葉支局、大坪景章 編『ドキュメント成田空港　傷だらけの15年』東京新聞出版局、1978年4月。
戸村一作『わが三里塚風と炎の記録』田畑書店、1980年3月。
朝日新聞成田支局『ドラム缶が鳴りやんで　元反対同盟事務局長石毛博道・成田を語る』四谷ラウンド、1998年6月。
* 歴史伝承委員会『歴史伝承委員会だより　第２号』財団法人航空科学振興財団、2005年。

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