鞆城

鞆城の歴史と現状

鞆城（ともじょう）は、広島県福山市鞆町後地に位置し、福山市指定史跡としてその名を残す城です。本城の歴史は古代にさかのぼり、潮待ちの港として重要な役割を果たしていました。 南北朝時代には、市街部に城はありませんでしたが、軍事的に重要な場所であったため、大可島城が築かれました。建武3年（1336年）には、足利尊氏がこの地で新田義貞追討の院宣を受けたこともあり、足利氏にとっては縁起の良い土地であったとされています。

鞆要害の構築と鞆幕府

鞆城の前身は、天文22年（1553年）頃、毛利元就の命により渡辺氏によって築かれた鞆要害です。これは尼子氏に対する防衛のために成立したもので、具体的な規模や構造は明らかでありませんが、鞆の浦歴史民俗資料館周辺がその城域であったと言われています。1576年、足利義昭は毛利氏の庇護の下でこの鞆要害に滞在し、「鞆幕府」を樹立しましたが、実際には幕府としての機能は薄かったとされています。藤田達生によると、義昭が幕府の名の下で活動を続け、上級政治勢力として存続していたとされています。

江戸時代の整備と廃城

江戸時代に入り、福島正則が鞆区域を与えられ、鞆要害は鞆城へと改修されました。鞆城は本丸、二の丸、三の丸からなる大規模な城郭が形成され、南には鞆港、東には福禅寺、北には沼名前神社の参道まで広がっていました。天守閣も建設されたと伝えられていますが、城の整備は慶長14年（1609年）まで続きました。しかし、徳川家康はこの城を恐れ、福島正則は築城を中止、さらには既設の建物も取り壊さなければなりませんでした。

その後、福島氏が改易され、鞆城跡には水野勝成が鞆奉行所を置いたことで新たな歴史が始まりました。江戸時代の中ごろまでには、旧鞆城の建築物も一部残っていたと言われていますが、大名の移封により次第にその存在は薄れていきました。

現在の鞆城跡

鞆城の跡地は現在、多くが住宅地となっていますが、本丸跡には鞆の浦歴史民俗資料館が設置されています。この資料館では、鞆城に関する発掘調査で出土した石垣が再利用されており、一部は展示されています。また、宮城道雄の像や早毛利稲荷神社が本丸跡に設置されています。1976年には市の史跡に指定され、多くの地域住民に親しまれています。

鞆城の歴史は、ただ単に軍事拠点としてだけでなく、日本の歴史の中で重要な役割を果たしてきました。現在もその跡地が市民にとっての大切な歴史の一部として残され、過去の記憶を伝えています。

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