鞆幕府

鞆幕府について

鞆幕府（ともばくふ）は、室町幕府の将軍・足利義昭が備後国に移り住んで形成された亡命政権です。この政権は歴史学者の藤田達生によって提唱されました。本稿では、鞆幕府の成立背景、義昭と毛利氏の関係、そしてその後の展開について詳述します。

鞆幕府の成立

1573年、室町幕府の足利義昭は槙島城の戦いで織田信長に敗北し、京都を追われて各地を流浪しました。1576年、義昭は毛利輝元を頼りに鞆に移座しました。この選定には、歴史的な意義があり、足利尊氏が光厳上皇から院宣を受けた地でもあったため、義昭の幕府復興の希望がかけられていました。義昭は輝元に幕府復興の依頼をしましたが、この動座には事前の連絡がなかったため、毛利氏の対応が求められる緊迫した情勢が生じました。

毛利氏との関係

鞆幕府は毛利氏に大きく依存した政権であり、義昭を擁立した毛利輝元は副将軍に任じられました。この関係により、義昭は毛利氏の庇護を受け、大義名分を持って信長と対抗することが可能となりました。義昭は毛利氏の当主に対して、軍事や外交上の助言を行い、さらに信長に対して協力するような行政機関として機能しました。義昭の影響力により、毛利氏は各地の大名との結びつきを強化し、多くの反信長勢力を糾合する役割を果たし、信長との戦いにおける優位性を獲得しました。

鞆幕府の実態と活動

歴史学者藤田達生は、義昭に付き従う食客や他の大名が集まったことから、鞆幕府には一定の実体があったとしています。義昭を中心とした約100名以上の幕臣が、外交や内政に従事し、礼銭を獲得するなど独自の経済活動を展開しました。義昭はまた、諸士に栄典を授け、京都五山の住持を任命することで、権威を保ちながら派遣された承認を強化しました。

財政と困難

鞆幕府の財政状況は、彼らが備中国の御料所からの年貢や他の支援に依存していましたが、恒常的な収入が少なく、信長との外交工作に必要な費用は高所の課題でした。義昭は相手にされなかった主な武将たちを養う責任もあり、さらなる苦困も強いられました。しかしながら、鞆幕府の活動を支えたのは、義昭の知名度と毛利氏の政治力であり、彼らは巧みに信長に付随して圧力をかける戦略を遂行しました。

鞆幕府の終焉

1587年、豊臣秀吉が九州に向けて出発する際、義昭と会談を持ち、彼は京都に帰還する準備を進めました。して、1588年に義昭は秀吉と共に参内し、将軍職を返上します。それは室町幕府の名実が終わる瞬間でもありました。歴史的に重要なこの動向は、毛利氏との関係や意義が変化し、信長との対立から新たな政治の動きへと移行する契機となったのです。

結論

鞆幕府は、足利義昭の亡命政権です。義昭が毛利氏の支援を受けて新たな形の幕府を樹立し、反信長勢力を統合させました。この政権はその後の動向や戦国時代の成立に重要な影響を及ぼしました。義昭の存在は、当時の大名らにとって一つの指標を提供し、彼の指導の下で新たな政治的秩序を築く助けとなりました。

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