鞭虫症

鞭虫症（べんちゅうしょう）とは

鞭虫症、または鞭虫感染は、寄生虫の一種であるヒト鞭虫によって引き起こされる感染病です。この病気は、少量の鞭虫による感染時は通常症状が現れず、しかし大量感染が起こると、腹痛や疲労感、下痢といった症状が見られることが多いです。特に注意が必要なのは、下痢が出血を伴うことがある点です。また、小児に感染した場合、知能や身体の発達に遅れが出る可能性もあります。さらに、出血が続くと赤血球数が減少することがあるため、貧血のリスクも懸念されます。

原因

鞭虫症は主に、鞭虫の卵が含まれた食物や水を口にすることで感染が広がります。また、野菜が虫卵で汚染されている場合、十分に洗浄や加熱処理しないと感染することがあります。虫卵は主に、人間が屋外に排泄したり、未処理の糞便を肥料として用いることによって土壌中に存在します。感染者によって排出された虫卵は、他の人々が触れた場合や口に入ることで感染が起こります。ヒト鞭虫自体はおおよそ4センチメートルの長さで、大腸内に寄生しています。

診断は便の顕微鏡検査によって行われ、特有の樽形をした虫卵が見られることで確定されます。

予防と治療

鞭虫症の予防には、調理の前に手を洗うこと、食材を適切に調理することが重要です。また、清潔なトイレや浄水設備にアクセスできる環境を整えることも有効です。世界的に見ても、感染が多く見られる地域では、成人や子供が定期的に集団で治療を行うことがあります。

治療法としては、アルベンダゾール、メベンダゾール、イベルメクチンといった薬剤が使われ、通常は3日間の服用が推奨されます。ただし、治療の後も再感染の可能性が高いことから、注意が必要です。

疫学

鞭虫感染は、世界中で約6億〜8億人に影響を与えているとされています。特に熱帯地域で多く見られ、発展途上国においては、鞭虫症に加えて鉤虫症や回虫症にかかることもよくあります。これらの感染症は、経済や健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。現在、鞭虫症に対するワクチンの開発も進行中であり、疾患予防の新たな手段として期待されています。なお、この病気は顧みられない熱帯病として分類されています。

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