韋提希

韋提希（いだいけ）

韋提希は、古代インドのマガダ国、頻婆娑羅王の妃として知られています。彼女は夫と共に仏教を信仰し、その姿は名古屋市栄国寺に美しい立像として残されています（開扉には予約が必要です）。「韋提希」という名は、サンスクリット語の「ヴァイデーヒー」の音写であり、「毘提訶（ヴィデーハ）出身の女性」を意味します。彼女の本名については諸説ありますが、一説にはコーサラ国のプラセーナジット王の妹、または娘とも言われています。チベット[[仏教]]の伝承では、ヴィデーハ国の大臣の娘であるとされています。

悲劇と信仰

韋提希は、頻婆娑羅王との間に阿闍世王子をもうけましたが、後に阿闍世が父王を幽閉するという悲劇に見舞われます。深く夫を案じた韋提希は、密かに食事を届けますが、その行為を知った阿闍世によって、彼女自身も幽閉されてしまいます。この幽閉中に、彼女は悲嘆に暮れ、釈迦に救いを求めます。この時の模様が『観無量寿経』に記されており、彼女の信仰と苦悩が詳細に描かれています。

釈迦との出会い

幽閉された韋提希は、霊鷲山に向かい釈迦に礼拝しました。釈迦は彼女の苦しみを知り、神通力で十方世界の浄土を示します。その中で、彼女は阿弥陀仏のいる極楽浄土を選びます。釈迦は、彼女に十六観法を説き、阿弥陀仏と極楽浄土の様子を詳しく教えました。この出来事をきっかけに、韋提希は初めて自己の人生と向き合い、自己の抱える問題と対峙することになります。

自己との対峙

釈迦の出現に、韋提希は自己の内にあった怒りや恨みを吐露し、自身の象徴であった瓔珞を引きちぎってしまいます。彼女は、今までの生き方を恥じ、真の自己を見つめ直すことになります。釈迦は、苦しむ彼女に寄り添い、瞑想法を説き、韋提希は自身が凡夫であると自覚します。この経験を通して、彼女は自己と出会い、釈迦の深い愛情に触れたとされています。

善導による解釈

『観無量寿経』の意味を明らかにした善導は、韋提希の歩みを「懺悔・請問・放光・現国等」と整理しています。これは、彼女が自身の罪を悔い、釈迦に教えを乞い、光を放ち、浄土を見たという一連の流れを示しています。この出来事は、韋提希が自己の内面と向き合い、救済を求める上で重要な転換点となりました。

韋提希の物語は、苦難の中で信仰を見出し、自己と向き合うことの大切さを教えてくれます。彼女の行動は多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

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